医師が過小評価した心房細動、予後にどう影響?/慶應義塾大学

提供元:ケアネット

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公開日:2024/03/07

 

 医師による心房細動患者の健康状態の評価と、その後の治療および転帰との関連を調査した結果、医師は心房細動患者の健康状態を過小評価していることが少なくなく、過小評価している場合はその後の治療の積極性が低く、1年後の健康状態の改善が乏しいことを、慶應義塾大学の池村 修寛氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2024年2月5日号掲載の報告。

 外来における心房細動の主な治療目標は、患者の症状・機能や生活の質を最適化することであるが、これは医師が心房細動患者の健康状態を正確に評価することで可能になる。そこで研究グループは、医師による心房細動患者の健康状態の評価と、その後の治療および転帰との関連性を調査するため、多施設共同前向きコホート研究を実施した。

 対象は、2018年11月8日~2020年4月1日に東京都内の3次医療機関2病院(慶應義塾大学病院、東京医療センター)で新たに心房細動と診断された患者、または心房細動の初回評価のために紹介されて外来を受診した患者であった。データ分析は2022年12月22日~2023年7月7日に実施された。主要アウトカムは、医師・患者の健康状態の評価の一致と治療エスカレーション(抗不整脈薬の変更または開始、除細動やカテーテルアブレーションの実施)との関連、1年後のAFEQT(Atrial Fibrillation Effect on Quality-of-Life)スコアの変化であった。

 患者報告による健康状態として、AFEQT質問票を用いて、症状、日常生活、治療不安の3領域の評価を組み合わせたAFEQTスコアを登録時と1年後に収集した。医師は、診察直後に簡略版の質問票を用いて、心房細動患者の前月の症状、日常生活、治療不安を評価した。各領域の項目に対する患者回答と医師評価のスコアの差から、医師が患者の健康状態を適正評価、過小評価、過大評価しているかを判断した。

 主な結果は以下のとおり。

・心房細動患者330例が登録・解析された。男性は238例(72.1%)、平均年齢(SD)は67.9(11.9)歳、発作性心房細動は163例(49.4%)であった。
・医師が健康状態を適正に評価した患者は112例(33.9%)、過小評価した患者は42例(12.7%)、過大評価した患者は176例(53.3%)であった。
・健康状態が過小評価された群は、適正に評価された群に比べてより若く(平均年齢[SD]:63.7[10.6]歳vs.65.6[12.3]歳)、心房細動アブレーションの治療歴があった(19.0% vs.8.0%)。
・206例(62.4%)の患者が初回評価から1年以内に治療がエスカレーションされた。健康状態が過小評価された群の実施率は47.6%で、適正に評価された群(63.6%)や過大評価された群(66.3%)よりも少なかった。
・多変量調整後、健康状態の過小評価は治療エスカレーションの頻度の低さと独立して関連していた(調整オッズ比:0.43、95%信頼区間:0.20~0.90、p=0.02)。
・適正または過大評価された群と比べて、過小評価された群では1年後のAFEQTスコアの改善が有意に低く(p=0.01)、とくに症状領域のスコアの改善が顕著に低かった(p<0.001)。

(ケアネット 森 幸子)