1回の肺CT検査でCNNがCOPDを正確に診断

提供元:HealthDay News

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公開日:2025/01/13

 

 人工知能(AI)を活用した新しい肺検査によって、呼吸困難のある人が慢性閉塞性肺疾患(COPD)であるかどうかを確認できる可能性のあることが、新たな研究で示された。通常のCOPDの診断では、患者が完全に息を吸い込んだときと吐き出したときの2回のCT検査が必要であるが、新しい検査では、息を吸いこんだときに撮影したCT画像のみからCOPDを正確に診断できるという。米サンディエゴ州立大学数学・統計学分野のKyle Hasenstab氏らによるこの研究結果は、「Radiology: Cardiothoracic Imaging」に12月12日掲載された。

 COPDは、細気管支炎や肺気腫などを含む進行性の肺疾患の総称であり、気流に制限が生じて呼吸能力が障害される病態を指す。現状ではCOPDには治療法がなく、世界で死亡原因としては3番目に多い。COPDの主な診断方法は、息を吸う力や吐く力を通じて肺機能を測定する検査(スパイロメトリー)であるが、Hasenstab氏によると、CTスキャンにより呼吸を妨げている可能性のある肺の損傷を検出して、COPDの診断に役立てている病院もあるという。しかし、「この種のプロトコルは、医療機関全体で、臨床的に標準化されているわけではない」と同氏は指摘する。その理由の一つは、医療スタッフがCT画像の撮像技術と読影力を身に付けるには、追加のトレーニングが必要な点にあるという。

 今回の研究でHasenstab氏らは、AIがCT画像を解釈できればスタッフをトレーニングする必要性が減り、COPDのCT検査をより多くの人に提供できるかもしれないとの仮説を立てた。そして、2007年11月から2011年4月の間に吸気と呼気のCTを撮影し、スパイロメトリーも受けた8,893人(平均年齢59.6歳、男性53.3%)の検査データを用いて、この仮説を検証した。

 Hasenstab氏らは、データから直接学習をするディープラーニングの手法の一つである畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて、臨床データ、および単一時相または多時相CT画像を基に、スパイロメトリーの測定値(1秒間の努力呼気量〔FEV1〕、予測FEV1%、および努力肺活量〔FVC〕に対するFEV1の比〔FEV1/FVC〕)を予測するモデルのトレーニングを行った。その後、予測されたスパイロメトリーの値から、COPDに関する世界的イニシアチブ(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease;GOLD)が定めた基準に基づきCOPDの重症度(ステージIからIVの4期)を予測した。

 その結果、CNNモデルが予測したスパイロメトリー測定値と実測値との一致度は、中程度から良好であることが示された。この一致度は、臨床データを加えることで改善することも判明した。また、このモデルは単一時相CT画像のみからでも重症度を正確に予測することも示された。重症度が実際GOLDのステージと完全に一致、またはその誤差が1ステージ以内で一致した割合は59.8~84.1%であった。

 Hasenstab氏は、「われわれの研究は、1回のCT検査と関連する臨床データに基づき、COPDを診断し重症度のステージを分類できることを示した」と述べている。同氏はまた、「CT検査を呼気時の1回に減らすことで、この診断法が現在よりも利用しやすくなり、また、患者の医療費、不快感、電離放射線への被曝量も軽減できる」と話している。

[2024年12月16日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら