口臭は誰にとっても嫌なものだが、それがどこから発生しているのかは不明だった。こうした中、日本の研究グループが、特定の口腔細菌が共生することで、メチルメルカプタン(CH3SH)と呼ばれる化学物質の産生量が増加することが口臭の一因であることを突き止めた。研究グループは、今後の口臭や体臭を予防するケア製品の開発につながる研究成果だとの見方を示している。大阪大学大学院薬学研究科先端化粧品科学(マンダム)共同研究講座の原武史氏らによるこの研究の詳細は、「mSystems」に1月30日掲載された。
CH3SHは口臭と歯周病との関連が強い主な口臭原因物質の一つであり、微量でも強い臭気を発することが知られている。原氏らは今回、嫌気条件下で2種類の細菌を接触させることなく共培養する方法を構築して、ヒトの口腔内に生息する主要な細菌の相互作用とCH3SH産生について調べた。
その結果、歯周病に関連する口腔常在菌のフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)がメチオニンを代謝する過程でCH3SHが産生されることが確認された。また、F. nucleatumが、歯の表面に付着して初期段階のプラーク形成に関与する口腔レンサ球菌のStreptococcus gordoniiと共生していると、CH3SHの産生量が最大で3倍になることも示された。研究グループは、これらの細菌の共生によるCH3SHの産生量増大の仕組みを「口臭増強機構」と呼んでいる。その具体的な経路は、S. gordoniiから分泌されるアミノ酸の一種のオルニチンがF. nucleatumによる生理活性物質ポリアミンの合成を促進することでメチオニン代謝経路が活性化し、CH3SHの産生量の増加につながるというものであるという。
原氏は、「これらの知見は、口腔内でのCH3SH産生が、S. gordoniiとF. nucleatumの相互作用によって促進されることを示唆している」と大阪大学のニュースリリースで述べている。
この研究は開始されてまだ間もないが、研究グループは、効果的な口臭予防法や治療薬の開発が、この口臭増強機構に基づいて進む可能性に期待を寄せている。また、口臭問題のリスク因子としてよく知られている歯周病の予防や治療に役立つ可能性もあると述べている。
[2024年2月19日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら