70歳以上の女性高齢者に対し、高用量ビタミンDを年1回投与することで、転倒リスクが増大してしまうようだ。また投与後3ヵ月間の転倒リスクは、約30%も増加したという。オーストラリアMelbourne大学臨床・生化学研究所のKerrie M. Sanders氏らが、2,200人超を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年5月12日号で発表している。ビタミンD投与と転倒リスクについては、これまで発表された試験結果で議論が分かれていた。
ビタミンD投与群の転倒リスクは1.15倍、骨折リスクは1.26倍に
同研究グループは、2003年6月~2005年6月にかけて、地域に住む70歳以上の女性高齢者、合わせて2,256人について試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方の群には毎年秋から冬にかけて3~5年間、ビタミンD(コレカルシフェロール50万IU)を年1回投与し、もう一方にはプラセボを投与。2008年まで追跡し、転倒や骨折の回数について調べた。
追跡期間中の骨折件数は、ビタミンD群1,131人のうち171件に対し、プラセボ群1,125人のうち135件だった。総転倒件数は、ビタミンD群は837人で2,892回(83.4回/100人・年)、プラセボ群は769人で2,512回(72.7回/100人・年)だった(発生率比:1.15、95%信頼区間:1.02~1.30、p=0.03)。
骨折に関するビタミンD群のプラセボ群に対する発生率比は、1.26(同:1.00~1.59、p=0.047)だった。
ビタミンD投与後3ヵ月の転倒リスクは約1.3倍
ビタミンD群の転倒については、特に投与後3ヵ月間にリスクが増大し、同期間のプラセボ群に対する発生率比は1.31に上ったのに対し、投与後3ヵ月以降の9ヵ月間の同発生率比は1.13だった(均一性検定、p=0.02)。
なお、ビタミンD群の25-ヒドロキシコレカルシフェロール血中濃度は、投与1ヵ月後に約120nmol/Lまで上昇し、同3ヵ月後には約90nmol/L、その後も投与後12ヵ月間プラセボ群より高濃度だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)