腹部大動脈瘤の血管内治療 vs. 非介入:動脈瘤関連死亡率は低下も全死因死亡率は同等

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2010/06/02

 



腹部大動脈瘤に対する血管内治療は、その技術開発意図だった「開腹手術が身体的に不適応な患者」に対しても長期的にはリスクを高め、コスト高の治療となっていることが、明らかになった。英国血管内治療(EVAR)試験研究グループの報告によるもので、NEJM誌2010年5月20日号(オンライン版2010年4月11日号)で発表された。開腹手術不適応な患者への血管内治療についてこれまで、介入によって死亡率が低下するかどうか非介入群との比較を行った試験データは、ほとんどなかった。

「開腹手術不適応」患者404例の転帰を最低5年、最長10年追跡




EVAR試験研究グループは、1999~2004年に英国内33の病院で、直径5.5cm以上腹部大動脈瘤であるものの「開腹手術不適応」と判断された患者404例(平均年齢76.8±6.5歳、男性86%)を対象に、血管内治療群(197例、病変部平均6.8±1.0cm)と非介入群(207例、平均6.7±1.0cm)の長期転帰を比較する無作為化試験「EVAR 2」を行った。

追跡は2009年末まで(最短5年、最長10年)で、Cox回帰分析を用いて両群間の死亡率、グラフト関連合併症発症率、再インターベンション率、医療コストについて、比較検討された。

8年間で血管治療群の方が約140万円コスト高




30日手術死亡率は、血管内治療群は7.3%だった。

非介入群の動脈瘤破裂全発生率は、12.4例/100人・年(95%信頼区間:9.6~16.2)。動脈瘤関連死亡率は、血管内治療群の方が有意に低かった(補正後ハザード比:0.53、95%信頼区間:0.32~0.89、P=0.02)。しかしそのアドバンテージにもかかわらず、全死因死亡率の比較で血管内治療が有益であることは示されなかった(補正後ハザード比:0.99、95%信頼区間:0.78~1.27、P=0.97)。

また血管治療群の48%が、グラフト関連合併症を発症し、27%が6年以内に再インターベンションを受けていた。無作為化後8年間、血管治療群の方が、かなり高額の費用がかっていた(コスト差:9,826ポンド、14,867米ドル)。

(医療ライター:武藤まき)