高齢急性骨髄性白血病に対する強化寛解導入化学療法の予後を予測するスコア法

提供元:ケアネット

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公開日:2010/12/23

 



高齢の急性骨髄性白血病(AML)患者に対する強化寛解導入療法による完全寛解(CR)の可能性および早期死亡(ED)のリスクの予測に有用なスコア法が、ドイツ・ミュンスター大学血液腫瘍科のUtz Krug氏らGerman Acute Myeloid Leukaemia Cooperative Group and the Study Alliance Leukemia Investigatorsによって開発された。60歳以上のAMLのうちAML以外は健康な状態(すなわち強化寛解導入療法が施行可能な病態)の患者の約半数は強化化学療法によってCRが達成されるが、若年の患者に比べEDのリスクが高いという。Lancet誌2010年12月11日号(オンライン版2010年12月4日号)掲載の報告。

AMLCG1999およびAML1996のデータを別個に解析




研究グループは、60歳以上のAML患者において標準的な臨床因子および検査値とCR、EDの関連を検証し、強化化学療法のリスクを評価するウェブベースのアプリケーションを開発するための検討を行った。

German Acute Myeloid Leukaemia Cooperative Group 1999 study(AMLCG1999)に登録された60歳以上の、AML以外は健常な患者1,406例について、細胞遺伝学的および分子的リスクプロフィール情報の有無別のリスクスコア法を開発するために、多変量回帰分析を用いた解析を行った。

これらの患者は、以下の二つのレジメンのいずれかによる強化寛解導入療法を2コース施行された。(1)tioguanine+標準用量シタラビン(商品名:キロサイド)+ダウノルビシン(同:ダウノマイシン)併用療法→高用量シタラビン+ミトキサントロン(商品名:ノバントロン)併用療法、(2)高用量シタラビン+ミトキサントロン併用療法。

AMLCG1999に基づくリスク予測の妥当性は、Acute Myeloid Leukaemia 1996 study(AML1996)で、シタラビン+ダウノルビシン併用療法を2コース施行された60歳以上のAML患者801例において別個に検証された。

治療法の決定が困難な場合の医師支援に有用




CRあるいはEDと有意な相関を示す因子として、体温、年齢、骨髄異形成症候群(MDS)を経ずに発症した白血病(de-novo leukaemia)か抗がん剤治療あるいは先行する血液疾患に起因する二次性の白血病か、ヘモグロビン、血小板数、フィブリノーゲン、血清乳酸脱水素酵素濃度が確認された。

CRの確率は、細胞遺伝学的および分子的リスクがある場合(スコア1)は12~91%、ない場合(スコア2)は21~80%であった。EDリスクの予測値はスコア1の場合は6~69%、スコア2の場合は7~63%であった。リスクスコアの予測能は個々の患者コホートにおいて確定された(CRスコア1:10~91%、CRスコア2:16~80%、EDスコア1:6~69%、EDスコア2:7~61%)。

著者は、「AMLスコアは、AML以外は健常な高齢患者に対して強化寛解導入療法を施行した場合のCRおよびEDの確率の予測に使用可能である」と結論し、「これらの情報は、治療法の決定が困難な場合の医師の支援に有用と考えられる」と指摘する。

(菅野守:医学ライター)