外傷性出血患者へのトラネキサム酸投与、重症度を問わず死亡リスクを減少

提供元:ケアネット

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公開日:2012/10/19

 

 外傷性出血患者の死亡および血栓イベントに関するトラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)投与の効果について検討した、国際多施設共同無作為化試験「CRASH-2」データ解析の結果、トラネキサム酸投与は重症度を問わず幅広い患者に、安全に投与可能であることが明らかにされた。英国・London School of Hygiene and Tropical MedicineのIan Roberts氏らによる報告で、BMJ誌2012年10月6日号(オンライン版2012年9月11日号)で発表した。

ベースライン死亡リスク別にみたトラネキサム酸使用との関連を評価

 CRASH-2試験は、トラネキサム酸投与により回避できた可能性がある早期死亡の割合を推定することを目的とする。研究グループは、同試験データを用いて事前特定した層別解析を行った。

 被験者は、UK Trauma and Audit Research Networkに登録された1万3,273例で、外傷受傷後3時間以内に、トラネキサム酸(1gを10分超で、続いて1gを8時間超で)またはプラセボにより処置された。被験者はベースラインで死亡リスクにより階層化(<6%、6~20%、21~50%、>50%)された。

 主要評価項目は、ベースライン死亡リスク別にみたトラネキサム酸使用との関連についての、オッズ比と95%信頼区間(CI)で、外傷4週以内の院内死亡、出血による死亡、致死的または非致死的血栓イベントとの関連について評価した。

 有効性の不均一性(p<0.001)の強いエビデンスがない限り、全体オッズ比は全階層において最も確実なオッズ比を導くものとして利用された。

死亡リスク<6%群17%、6~20%群36%、21~50%群30%、>50%群17%が死亡回避可

 結果、トラネキサム酸群は、全死因死亡および出血による死亡が有意に減少した。

 ベースライン死亡リスク階層群のいずれにおいても、トラネキサム酸群の死亡が低かった。

 全死因死亡(相互作用p=0.96)、および出血死亡(p=0.98)とも、ベースライン死亡リスク階層群によるトラネキサム酸の効果について不均一性のエビデンスはなかった。

 トラネキサム酸の治療を受けた患者では、致死的または非致死的血栓イベントのオッズ比が有意に減少した(オッズ比:0.69、95%CI:0.53~0.89、p=0.005)。また動脈血栓イベントも有意に減少した(同:0.58、0.40~0.83、p=0.003)。しかし、静脈血栓イベントの減少は有意ではなかった(同:0.83、0.59~1.17、p=0.295)、

 トラネキサム酸の血栓イベントについて、不均一性のエビデンスはなかった(p=0.74)。

 トラネキサム酸の効果が全リスク階層で同等である場合、受傷後3時間以内でトラネキサム酸投与を受けたことによる死亡回避の割合は、死亡リスク<6%群で17%、同6~20%群で36%、同21~50%群で30%、同>50%群で17%であった。