プロトンポンプ阻害薬(PPI)やヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2RA)の長期服用は、ビタミンB12欠乏症の発症リスクを、1.25~1.65倍に増大することが明らかになった。米国の大手保険会社・カイザーパーマネンテのJameson R. Lam氏らが、同社保険プランの加入者データを用い、ビタミンB12欠乏症の診断を受けた約2万6,000例とその対照群について行った症例対照試験の結果、報告した。結果を受けて著者は、「胃酸分泌抑制薬を処方する際は、リスクとベネフィットのバランスを考慮すべきであることが示唆された」とまとめている。JAMA誌2013年12月11日号掲載の報告より。
ビタミンB12欠乏症の約2万6,000例と対照群約18万4,000例を比較
研究グループは、米国の保険プラン「北カリフォルニア・カイザーパーマネンテ」の加入者のうち、1997~2011年にビタミンB
12欠乏症の診断を受けた2万5,956例について、同診断を受けなかった18万4,199例を比較する症例対照研究を行った。ビタミンB
12欠乏症と、それ以前のPPI、H
2RAの処方との関連について分析を行った。
分析には、薬剤処方、臨床検査、診断のそれぞれデータベースを使用した。
ビタミンB12欠乏症リスク、2年以上PPI処方で1.65倍、同H2RA処方で1.25倍
その結果、ビタミンB
12欠乏症と診断された人のうち、2年以上PPIの処方を受けていた人は3,120例(12.0%)、同H
2RAの処方を受けていた人(PPI処方はなし)は1,087例(4.2%)だった。いずれも受けていなかった人は、2万1,749例(83.8%)だった。
一方、ビタミンB
12欠乏症の診断を受けていなかった人で、2年以上PPIの処方を受けていた人は1万3,210例(7.2%)、同H
2RAの処方を受けていた人は5,897例(3.2%)だった。いずれも受けていなかった人は16万5,092例(89.6%)。
2年以上PPIまたはH
2RAの処方を受けていた人は、いずれもビタミンB
12欠乏症リスクの増大が認められた。オッズ比は、PPI群が1.65(95%信頼区間:1.58~1.73)、H
2RA群は1.25(同:1.17~1.34)だった。
また、PPIの処方が1.5錠/日超の人は、0.75錠/日未満の人に比べ同リスクが高く、オッズ比は1.95(同:1.77~2.15、p=0.007)だった。
著者は、「胃酸分泌抑制薬服用の既往および現在使用は、ビタミンB
12欠乏症と有意な関連があった」と結論し、そのうえで「この結果は、胃酸分泌抑制薬の処方についてリスクとベネフィットのバランスを考慮すべきであることを示唆するものである」と述べている。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)