抗アルドステロン薬は、左室駆出率が保持(45%以上)された心不全患者については、臨床転帰を有意に改善しないことが判明した。米国・ミシガン大学のBertram Pitt氏ら「TOPCAT」研究グループが行った3,445例を対象とした試験の結果、示された。同薬は、左室駆出率が低下した心不全患者の予後を改善することが示されている。しかし駆出率が保持された患者については厳格な検討は行われていなかった。NEJM誌2014年4月10日号掲載の報告より。
6ヵ国3,445例をスピロノラクトン投与かプラセボ投与に無作為化
TOPCAT(Treatment of Preserved Cardiac Function Heart Failure with an Aldosterone Antagonist)試験は、左室駆出率が保持された症候性心不全患者において、スピロノラクトン(商品名:アルダクトンAほか)治療が臨床転帰を改善するかどうかを確定することを目的とした国際多施設共同の無作為化二重盲検プラセボ対照試験だった。試験は米国・国立心肺血液研究所(NHLBI)が資金提供をして行われた。
2006年8月10日~2012年1月31日に、6ヵ国(米国・カナダ、ブラジル、アルゼンチン、ロシア、グルジア)233施設で3,445例(左室駆出率45%以上の症候性心不全患者)が無作為化を受け、スピロノラクトン(15~45mg/日)もしくはプラセボの投与を受けた。
主要アウトカムは、心血管系による死亡・心停止蘇生・心不全入院の複合であった。
総死亡、全原因入院のいずれも有意に減少しない
スピロノラクトン群に1,722例、プラセボ群には1,723例が無作為に割り付けられた。
結果、平均追跡期間3.3年において、主要アウトカムの発生は、スピロノラクトン群320例(18.6%)、プラセボ群351例(20.4%)で、両群に有意差はみられなかった(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.77~1.04、p=0.14)。
主要アウトカムのうち心不全入院についてのみ、スピロノラクトン群の発生が有意に低かった(12.0% vs. 14.2%、HR:0.83、95%CI:0.69~0.99、p=0.04)。総死亡および全原因入院のいずれも、スピロノラクトンによる有意な減少はみられなかった。
有害事象について、スピロノラクトン群では、高カリウム血症の頻度がプラセボ群よりも約2倍高かった(18.7% vs. 9.1%)。一方で、低カリウム血症の頻度は低かった(16.2% vs. 22.9%)。またスピロノラクトン群では、血清クレアチニン値が、標準範囲上限値の倍以上上昇した患者の割合が多くみられた(10.2% vs. 7.0%)。しかし、血清クレアチニン値3.0mg/dL超あるいは透析を要した患者の割合は、両群間で有意な差はなかった。
(武藤まき:医療ライター)