急性虚血性脳卒中へのt-PA開始、全国的取り組みで有意に改善/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2014/05/08

 

 急性虚血性脳卒中への組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)投与の適時開始を推進するため、米国では2010年1月から全国的な質的改善の取り組み「Get With The Guidelines-Stroke」が始められた。その成果についてカリフォルニア大学のGregg C. Fonarow氏らが調べた結果、60分未満で開始するというdoor-to-needle time(DTN時間)内での実施率は、取り組み開始直前四半期の29.6%から開始後最終四半期には53.3%まで増え、それに伴い院内死亡、頭蓋内出血の発生は低下し自宅に退院する患者の割合は増加していたことが明らかになった。JAMA誌2014年4月23・30日号掲載の報告より。

取り組み開始前と開始後のDTN時間や臨床アウトカムを評価

 研究グループは、t-PA投与に関するDTN時間と60分未満で投与された患者の割合について、質的改善の取り組みが開始される以前(介入前期間)と以後(介入後期間)について評価し、またDTN時間を改善することが臨床アウトカムの改善と関連するのかについて調べた。質的改善の取り組みでは、DTN時間内実行達成のための10の治療戦略(救急隊員による病院への事前通告、ワンコールでの脳卒中医療チームの起動、脳画像の迅速な入手と読影など)の普及、臨床意思決定サポートツールの提供、病院の参加に対する支援、ベストプラクティス共有の促進などが行われた。

 成果の検討は、取り組みに参加した1,030病院(全参加病院の52.8%)において急性虚血性脳卒中でt-PA治療を受けた7万1,169例(取り組み介入前期間2003年4月~2009年12月:2万7,319例、同開始後期間:2010年1月~2013年9月:4万3,850例)を対象に行われた。

 主要アウトカムは、t-PA投与のDTN時間が60分未満であった割合、院内リスク補正後死亡率、症候性頭蓋内出血、退院時の歩行状態、退院先とした。

DTN時間60分未満開始が有意に増大、臨床アウトカムは有意に改善

 t-PA投与のDTN時間中央値は、介入前期間の77分(四分位範囲[IQR]:60~98分)から、介入後期間は67分(同:51~87分)に短縮した(p<0.001)。

 t-PA投与のDTN時間が60分未満であった患者の割合は、介入前期間の26.5%(95%信頼区間[CI]:26.0~27.1%)から介入後期間は41.3%(同:40.8~41.7%)まで増加した(p<0.001)。四半期ごとにみると、介入直前の四半期(2009年度第4四半期)では29.6%(同:27.8~31.5%)であったが、介入後最終四半期(2013年度第3四半期)には53.3%(95%CI、51.5~55.2%)まで増加していた(p<0.001)。

 DTN時間60分未満への年間改善率は、介入前は1.36%(95%CI:1.04~1.67%)だったが、介入後は6.20%(同:5.58~6.78%)に増加していた(p<0.001)。

 院内全死因死亡率も、介入前と比べて介入後は有意に改善していた(9.93%対8.25%、補正オッズ比[OR]:0.89、95%CI:0.83~0.94、p<0.001)。また、36時間以内の症候性頭蓋内出血の発生頻度も有意に減少し(5.68%対4.68%、補正後オッズ比[OR]:0.83、95%CI:0.76~0.91、p<0.001)、自宅に退院する患者の割合が有意に上昇していた(37.6%対42.7%、補正後OR:1.14、95%CI:1.09~1.19、p<0.001)。

(武藤まき:医療ライター)

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コメンテーター : 内山 真一郎( うちやま しんいちろう ) 氏

国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授

赤坂山王メディカルセンター脳神経内科部長

J-CLEAR評議員