急性脳梗塞へのt-PA治療、door-to-needle timeが短いほど転帰良好/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2020/06/11

 

 65歳以上の急性虚血性脳卒中の患者に対するt-PA治療について、来院から治療開始までの時間「door-to-needle time」が短いほど、1年後の全死因死亡および全再入院の割合は低いことが明らかにされた。米国・クリーブランドクリニックのShumei Man氏らが、6万例超を対象とした後ろ向きコホート試験の結果を報告した。著者は、「今回の結果は、血栓溶解療法はできるだけ早く開始すべきことを支持するものであった」とまとめている。先行研究で急性虚血性脳卒中の患者に対するt-PA治療の早期開始は、退院までの死亡率を低下し、3ヵ月時点の機能的アウトカムが良好であることを示していたが、治療開始までの時間短縮がより良好な長期的アウトカムにつながるかについては明らかになっていなかった。JAMA誌2020年6月2日号掲載の報告。

door-to-needle timeと1年時点の全死因死亡率を比較

 研究グループは2006年1月1日~2016年12月31日にかけて、米国で行われている心疾患治療標準化のためのレジストリ「Get With The Guidelines-Stroke(GWTG-脳卒中)」プログラムに参加する病院で、急性虚血性脳卒中を発症しt-PA静脈投与を受けた65歳以上のメディケア受給者を対象に、後ろ向きコホート試験を行った。被験者は、体調が悪化してから4.5時間以内にt-PA静脈投与を受けた患者に限定した。

 来院からt-PA治療開始までの時間である「door-to-needle time」と、1年時点の全死因死亡率、全再入院率、全死因死亡・全再入院の複合発生率との関連を検証した。追跡期間は1年間で、2017年12月まで行った。

door-to-needle timeが15分延長で全死因死亡リスク1.04倍

 4.5時間以内にt-PA治療を受けた患者は6万1,426例で、年齢中央値は80歳、男性が43.5%。来院から治療開始までの時間であるdoor-to-needle timeの中央値は、65分(四分位範囲:49~88)だった。

 door-to-needle timeが45分超だった4万8,666例(79.2%)は、45分以内だった被験者と比べて、全死因死亡率が有意に高率だった(35.0% vs.30.8%、補正後ハザード比[HR]:1.13[95%信頼区間[CI]:1.09~1.18]、p<0.001)。また、全再入院率(40.8% vs. 38.4%、1.08[1.05~1.12]、p<0.001)、全死因死亡・全再入院の複合発生率(56.0% vs.52.1%、1.09[1.06~1.12]、p<0.001)も45分超群で有意に高率だった。

 door-to-needle timeが60分超だった3万4,367例(55.9%)についても、60分以内だった被験者と比べて、全死因死亡率(35.8% vs.32.1%、補正後HR:1.11[95%CI:1.07~1.14]、p<0.001)、全再入院率(41.3% vs. 39.1%、1.07[1.04~1.10]、p<0.001)、全死因死亡・全再入院の複合発生率(56.8% vs.53.1%、1.08[1.05~1.10]、p<0.001)のいずれも有意に高率だった。

 全死因死亡は、door-to-needle timeが15分延長するごとに、病院到着後90分以内では有意に増大することが示された(補正後HR:1.04、95%CI:1.02~1.05、p<0.001)。しかし90分以降では増大は有意ではなかった(1.01、0.99~1.03、p=0.27)。

 また、病院到着後90分以内でdoor-to-needle timeが15分延長するごとに、全再入院、全死因死亡・全再入院の複合発生のリスクは、いずれも有意に増大した(いずれもHR:1.02、95%CI:1.01~1.03、p<0.001)。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 内山 真一郎( うちやま しんいちろう ) 氏

国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授

赤坂山王メディカルセンター脳神経内科部長

J-CLEAR評議員