糖尿病患者への意思決定支援ツールの効果/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2014/10/16

 

 患者指向の治療意思決定支援(デシジョンエイド)の有用性について、相当量を投じても同ツールの使用で期待される患者のエンパワメント改善には結び付かないことが、オランダ・フローニンゲン大学医療センターのPetra Denig氏らによる、プラグマティック無作為化試験の結果、明らかにされた。原因として、大半の患者が、同ツールを完全には使いこなしていないことが判明したという。デシジョンエイドは、治療管理における患者と医師の意思疎通を助け、患者指向型の治療ゴール設定を促進することが可能とされる。本検討では複数の疾患を抱える糖尿病患者についての有用性を検討した。BMJ誌オンライン版2014年9月25日号掲載の報告より。

デシジョンエイドの提供が患者のエンパワメントに与える影響を試験
 検討は、オランダ北部の18人の一般医(GP)を介して行われた。2型糖尿病を有し、診断時の年齢は65歳以上で、プライマリケアで治療管理を受けている344例を対象とした。

 試験期間は2011年4月~2012年8月で、225例を介入群に、119例を通常ケア群に割り付けた。

 介入群には、糖尿病患者のためのデシジョンエイドを提供。デシジョンエイドは、臨床領域間の優先順位決定について患者をエンパワーし、治療意思決定の支援をすることが目的である。介入に用いられたデシジョンエイドは、それぞれ各人用に修正されたリスク情報と複数のリスク因子に対する治療選択肢が盛り込まれた。

 同ツールを定期受診前に提供し、また診療中に担当医から提供してもらった。

 検討では、4つの異なるフォーマットのデシジョンエイドを含んだ探索的分析も行われた。

 主要アウトカムは、治療目標の設定および達成のエンパワメントに与えた影響だった。副次アウトカムは、血糖、血圧、脂質、蛋白尿を調整するための処方薬の変化とした。

 データは、構造化質問票からと、介入前後6ヵ月間自動収集した電子ヘルスレコードを通じて収集した。

脂質低下治療について変化、ただし有意な変化をもたらしたのは紙媒体
 介入群で、介入の基本エレメントを受けていたのは103例(46%)だった。主要アウトカムの解析に十分なベースライン時とフォローアップデータを組み込めたのは、介入群199例、対照群107例だった。

 分析の結果、介入群のエンパワメントスコアの増大は、5ポイント制において0.1で、対照群との有意差はみられなかった。ベースライン変数を補正後の平均差は0.039(95%信頼区間[CI]:-0.056~0.134)だった。

 コレステロール値が高い被験者における脂質低下薬の投与について、介入群では25%が強化され、対照群では12%であった。しかし、有意差は認められなかった(オッズ比:2.54、95%CI:0.89~7.23)。事前規定の探索的分析により、介入群の処方強化の影響は、プリントされたデシジョンエイドによるものであることが示された(同:3.90、1.29~11.80)。

 そのほかの治療について、重要または有意な変化は認められなかった。

(武藤まき:医療ライター)

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コメンテーター : 住谷 哲( すみたに さとる ) 氏

社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会泉尾病院 糖尿病・内分泌内科 主任部長

J-CLEAR評議員