民営化後も医療格差は拡大せず/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2014/11/06

 

 2000年代に営利病院(profit hospital)に転換した病院について調べた結果、利益率が改善していた一方で医療の質や死亡率、貧困層やマイノリティ患者へのケア提供の割合は変わっていなかったことが報告された。米国・ハーバード公衆衛生大学院のKaren E. Joynt氏らが237病院について、転換前2年と転換後2年の変化を、適合対照631病院と比べて評価した。米国ではここ10年で、営利病院へ転換する病院が増大したという。それらの病院が医療保険支払者や利益に注力し、患者をないがしろにし、医療の質に留意しなくなるのではないかという懸念が高まっていた。JAMA誌2014年10月22・29日号掲載の報告より。

2003~2010年に転換した237病院について適合対照病院と比較検証
 研究グループは、2003~2010年に営利病院に転換した237病院と、適合対照631病院について、後ろ向きコホート研究を行った。検討に含まれたメディケア受給患者で、転換病院群184万3,764例、対照病院群482万8,138例であった。患者群の57%が女性、年齢中央値は75歳、82%が白人で、30%が民間保険にも加入していた(dual-eligible)。

 転換した年のデータを除外したdifference-in-differenceモデルで、転換前2年間と転換後2年間の財務状況、医療の質、死亡率、メディケア報酬および患者の割合について評価した。

利益率は有意に改善、医療の質・死亡率・公的保険の取り扱い量は変化せず
 営利病院に転換したのは、中小規模(100床未満50.6%、100~399床44.7%)、南部地域(53.6%)、都市(47.3%)/都市近郊(8.9%)の、非教育病院(84.8%)が多かった。

 分析の結果、営利転換病院は対照病院と比較して、利益率(医業収益+その他収益に占める純収益の割合)が有意に改善していた。利益率の改善は2.2%vs. 0.4%、difference in differencesは1.8%(95%信頼区間[CI]:0.5~3.1%、p=0.007)であった。

 医療の質は、営利病院、対照病院ともに同程度の改善(6.0%vs. 5.6%)であった(difference in differences:0.4%、95%CI:-1.1~2.0%、p=0.59)。メディケア受給患者の死亡率(全死因)も対照病院と比べて有意差は示されなかったが、むしろ増大割合は少なかった(0.1%vs. 0.2%、difference in differences:-0.2%、95%CI:-0.5~0.2%、p=0.42)。同様の傾向は、dual-eigible患者(difference in differences:0.0%、95%CI:-0.5~0.4%、p=0.86)、65歳超の障害のある患者(同:0.3、-0.2~0.8、p=0.30)でも認められた。

 年間メディケア受給患者数の変化(-111例vs. -74例)にも有意な差はなかった(difference in differences:-37例、95%CI:-224~150例、p=0.70)。Disproportionate Share Hospital Indexでみると1.7%vs. 0.4%(p=0.26)、メディケア患者が占める割合でみると-0.2%vs. 0.4%(p=0.38)だった。また黒人患者(-0.4%vs. -0.1%、p=0.72)、ヒスパニック系患者(0.1%vs. -0.1%、p=0.50)の割合の変化についてもそれぞれ有意な差はみられなかった。

(武藤まき:医療ライター)