健康関連ニュースは、健康に関連した行動に大きく影響を与える可能性があり、同時に、しばしば誤ったサイエンスを報じることになる。英国・カーディフ大学のPetroc Sumner氏らは、健康関連ニュースのミスリードをもたらす誇張が、報道機関自体にあるのか、それとも研究発表をした施設のプレスリリース作成に問題があるのかを、後ろ向き観察研究にて調べた。その結果、ニュースの誇張部分は研究施設側のプレスリリースと関連していたことが判明したという。結果を踏まえて著者は、「研究施設がプレスリリースの正確性を改善することが、ミスリードにつながる健康関連ニュースを減らす鍵であり、公衆衛生にベネフィットをもたらすことになる」と述べている。BMJ誌オンライン版2014年12月12日号掲載の報告より。
報道側が引き起こしているのか、プレスリリースに起因するのかを検討
研究グループは、読者の健康関連行動に影響を与える可能性がある研究の主要結果が、歪曲、誇張、変更されたソース(プレスリリースにあるのかニュースにあるのか)を特定するため、学術誌の記事、プレスリリース、関連ニュースでシミュレーションを伴うものを調べた。
2011年に英国の20の主要大学から出された、バイオメディカルと健康関連科学に関するプレスリリース462本と、関連するピアレビュー研究ペーパー、ニュース記事668本が分析対象となった。
主要評価項目は、読者に行動変容をもたらしたアドバイス、相関研究から引き出された原因ステートメント、動物実験からヒトに対する結論を論じて影響を与えていた内容であった。
研究施設のプレスリリースの誇張が、ミスリードの原因
プレスリリースのうち、40%(95%信頼区間[CI]:33~46%)に誇張されたアドバイスが含まれていた。また、33%(同:26~40%)では誇張された原因のステートメントが含まれており、36%(同:28~46%)に動物研究の結果からヒトに対する推論を論じたものが含まれていた。
プレスリリースにそのような誇張が含まれると、ニュース記事にも同じように誇張が含まれていた。誇張されたアドバイスが含まれていたのは58%(95%CI:48~68%)、原因ステートメントが含まれていたのは81%(70~93%)、動物研究からヒトへの推論は86%(77~95%)にそれぞれ含まれていた。
プレスリリースにそうした誇張が含まれていない場合の誇張記事の割合は、それぞれ17%(10~24%)、18%(9~27%)、10%(0~19%)であった。
プレスリリースで誇張が含まれていた場合のニュース記事に誇張が含まれるオッズ比は、アドバイスについては6.5(95%CI:3.5~12)、原因ステートメントについては20(同:7.6~51)、動物実験については56(同:15~211)であった。
なお、プレスリリースにおける誇張が、ニュースとして取り上げられる機会を増大していたというエビデンスはほぼなかった。
(武藤まき:医療ライター)