ホルモン受容体陽性の閉経前乳がん女性の治療では、タモキシフェン(TAM)による術後ホルモン療法が推奨されている。また、これらの患者では卵巣でのエストロゲン産生の抑制が再発を低減することが知られている。そこで、オーストラリア・メルボルン大学のPrudence A FrancisらInternational Breast Cancer Study Group(IBCSG)は、術後TAM療法への卵巣抑制療法の追加の有用性を検討し、再発リスクが高い患者で転帰の改善が得られる可能性があることを確認した。NEJM誌2014年12月11日号掲載の報告。
卵巣抑制追加5年治療の効果を無作為化試験で評価
本研究はSOFT試験と呼ばれ、閉経前早期乳がんの術後補助療法において、TAM単独、TAM+卵巣抑制、アロマターゼ阻害薬エキセメスタン+卵巣抑制の3群を比較する無作為化第III相試験である(Pfizer社、Ipsen社、IBCSG、米国立がん研究所の助成による)。今回、フォローアップ期間中央値67ヵ月におけるTAM単独とTAM+卵巣抑制の2群の解析結果が報告された。
被験者は、前化学療法歴の有無で層別化された後、3群に無作為に割り付けられ、5年の治療が行われた。卵巣抑制療法は、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)作動薬トリプトレリン(28日ごとに筋注)、両側卵巣摘除術、両側卵巣放射線照射のいずれかを施行した。主要評価項目は無病生存率(DFS)であった。
2003年12月~2011年1月までに、TAM単独群に1,021例、TAM+卵巣抑制群には1,024例が割り付けられた。全体の年齢中央値は43歳、前化学療法歴ありが53.3%、リンパ節転移陽性が34.9%、腫瘍径>2cmが31.9%、前ホルモン療法歴ありは25.7%だった。
多変量解析では有意に良好
5年DFSはTAM+卵巣抑制群が86.6%、TAM単独群は84.7%であり、両群間に有意な差は認めなかった(再発、2次浸潤がん、死亡のハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.66~1.04、p=0.10)。一方、多変量解析では、TAM+卵巣抑制群のDFSがTAM単独群よりも有意に良好であった(HR:0.78、95%CI:0.62~0.98、p=0.03)。
再発例のほとんどが化学療法施行後も閉経前状態の患者であったが、これらの患者の5年無乳がん生存率はTAM+卵巣抑制群が82.5%、TAM単独群は78.0%と有意な差はないものの、臨床的に意味のある再発数の減少が認められた(HR:0.78、95%CI:0.60~1.02)。
TAM投与を早期に中止した患者は、TAM+卵巣抑制群が16.7%、TAM単独群は21.7%であり、TAM+卵巣抑制群のトリプトレリン完遂率は80.7%であった。
Grade 3以上の有害事象の発現率は、TAM+卵巣抑制群が31.3%、TAM単独群は23.7%であった。TAM単独群に比べTAM+卵巣抑制群で頻度の高い有害事象として、ホットフラッシュ、発汗、性欲減退、膣乾燥、不眠、うつ状態、筋骨格系症状、高血圧、耐糖能異常(糖尿病)が認められた。また、骨粗鬆症がTAM+卵巣抑制群の5.8%、TAM単独群の3.5%にみられた。
著者は、「患者集団全体では卵巣抑制追加のベネフィットは得られなかったが、再発リスクが高く、術後化学療法が施行されたが閉経に至らなかった患者では、転帰の改善が得られた」と結論している。
(菅野守:医学ライター)