臨床開発中止で患者2万超例分のデータが未公表/BMJ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2015/03/27

 

 カナダ・マギル大学のAmanda Hakala氏らは、臨床開発中止となった薬物(stalled drugs)の試験報告へのアクセシビリティについて、登録試験を系統的に評価して定量化を行った。その結果、開発に成功し承認された薬物(licensed drugs)の試験公表率は75%に対し、開発が中止となった薬物については37%で、公表について両者に大きな差があることを明らかにした。著者は、「開発が遅れている薬物試験で収集された情報の大半が、研究や臨床に生かされてない」と述べ、「臨床研究における透明性、倫理性、説明責任を促進するポリシー改善を行うべきことが実証された」とまとめている。BMJ誌オンライン版2015年3月9日号掲載の報告。

がん、心血管疾患または神経障害領域の登録試験の公表率を定量化
 検討は、clinicaltrials.gov、Google Scholar、PubMed、Embaseなどを検索して、がん、心血管疾患、神経障害領域の「承認薬」と「臨床開発中止薬」の登録試験を調べ、公表状況を評価した。評価に組み込んだ「承認薬」の試験は、2005~2009年にFDAの承認を受けた薬物の試験で、「臨床開発中止薬」の試験は、2009年までに1つ以上の第III相試験が完了し2009年12月31日以降の臨床試験実施のエビデンスがないものを適格とした。

 公表の適格基準は、2006年1月1日~2008年12月31日の間に1人以上の被験者を登録し主要アウトカムを報告していた、clinicaltrials.govへ登録されていた第II、IIIまたはIV相試験とした。

公表率は承認薬試験75%に対し臨床開発中止となった薬の試験は37%
 承認薬の登録試験の補正前公表率は75%(72/96例)に対し、臨床開発中止薬の試験は37%(30/81例)であった。公表率は、承認薬試験のほうが2.7倍良好であった(ハザード比:2.7、95%信頼区間[CI]:1.7~4.3)。

 承認薬試験では、疾患タイプ、スポンサーシップ、試験フェーズ、試験地にかかわらず公表率が高かった。

 承認薬試験との比較において、臨床開発中止薬試験の未公表率は、登録が完了していなかった試験で有意に高かった。

 臨床開発中止薬試験に参加していた患者、総計2万135例分のデータが未公表であることが判明した。