心筋梗塞の既往歴(1~3年前)を有する患者について、P2Y12受容体拮抗薬チカグレロル(国内未承認)の有効性と安全性を検討したPEGASUS-TIMI 54試験の結果、心血管系死亡、心筋梗塞、脳卒中のリスクを有意に低下し、重大出血リスクは増大することが示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMarc P. Bonaca氏らが報告した。これまでに、P2Y12受容体拮抗薬の心筋梗塞後1年間超の長期にわたる2次予防効果については明らかにされていなかった。NEJM誌オンライン版2015年3月14日号掲載の報告より。
1~3年前に発症した患者2万1,162例について無作為化プラセボ対照試験
試験は、1~3年前に心筋梗塞を発症した2万1,162例を、チカグレロル90mgの1日2回投与群(7,050例)、同60mgの1日2回投与群(7,045例)、プラセボ投与群(7,067例)の3群に、二重盲検下で無作為に割り付けて行った。無作為化は2010年10月~2013年5月に行われ、心筋梗塞発症から無作為化までの期間中央値は1.7年であった。
被験者は全員、低用量アスピリン投与を受けていた。追跡期間は中央値33ヵ月間であった。
主要有効性エンドポイントは、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合。主要安全性エンドポイントは、TIMI基準に基づく重大出血の発生であった。
チカグレロル投与90mgまたは60mg群、いずれも有意にリスクを低下
結果、チカグレロル投与群は両者とも、プラセボ群と比較して有意に主要エンドポイントの発生が低下した。Kaplan-Meier分析による3年時点の発生率は、90mg群7.85%、60mg群7.77%に対し、プラセボ群は9.04%で、90mg群の対プラセボ群のハザード比は0.85(95%信頼区間[CI]:0.75~0.96、p=0.008)、60mg群は同0.84(同:0.74~0.95、p=0.004)であった。
一方、安全性に関するTIMI重大出血の発生は、プラセボ群(1.06%)と比較してチカグレロル群で有意に高率(90mg群2.60%、60mg群2.30%、それぞれの対プラセボp<0.001)であった。なお、頭蓋内出血または致死的出血の発生率は、プラセボ群0.60%、チカグレロル90mg群0.63%、同60mg群0.71%で、有意差はみられなかった(対プラセボ群の90mg群のp=0.43、同60mg群のp=0.47)。