重症アルコール性肝炎の推奨薬、その効果は?/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2015/05/08

 

 アルコール性肝炎は、重症化すると短期的死亡率が30%を超えるという。英国・インペリアル・カレッジのMark R Thursz氏らSTOPAH試験の研究グループは、本症の治療におけるプレドニゾロンとペントキシフィリン(国内未承認)の有用性について検討した。本症は黄疸と肝障害を特徴とする臨床症候群であり、多量のアルコールを長期間摂取することで発症する。両薬剤とも重症例の治療薬として推奨されているが、そのベネフィットは確立されていない。NEJM誌2015年4月23日号掲載の報告より。

4群を無作為化試験で比較
 STOPAH試験は、2×2要因デザインを用いた二重盲検無作為化試験で、2011年1月~2014年2月に英国の65施設で患者登録が行われた。

 対象は、年齢18歳以上、臨床的にアルコール性肝炎と診断され、平均アルコール摂取量が男性は80g/日以上、女性は60g/日以上であり、血清ビリルビン>4.7mg/dL、Maddrey判別関数(discriminant function)≧32(発症後の1ヵ月死亡率20~30%、6ヵ月死亡率30~40%と予測される重症例)の患者とした。

 被験者は、以下の4つの投与群に無作為に割り付けられ、28日間の治療が行われた。(1)プレドニゾロンにマッチさせたプラセボ+ペントキシフィリンにマッチさせたプラセボ(プラセボ群)、(2)プレドニゾロン+ペントキシフィリンにマッチさせたプラセボ(プレドニゾロン群)、(3)ペントキシフィリン+プレドニゾロンにマッチさせたプラセボ(ペントキシフィリン群)、(4)プレドニゾロン+ペントキシフィリン(併用群)。

 主要評価項目は28日時の死亡とし、副次的評価項目は90日および1年時の死亡または肝移植などであった。

 1,103例が登録され、プラセボ群に276例、プレドニゾロン群に277例、ペントキシフィリン群に276例、併用群には274例が割り付けられ、1,092例(272例、274例、273例、273例)が解析の対象となった。

プレドニゾロン投与で28日死亡率が改善傾向
 ベースライン時の全体の平均年齢は48.7±10.2歳、男性が63%で、アルコール摂取量は男性200.1±125.2g/日、女性149.5±104.3g/日であり、血清ビリルビンが17.6±9.1mg/dL、Maddrey判別関数は62.6±27.2であった。

 主要評価項目のデータは1,053例で得られた。28日死亡率は、プラセボ群が17%(45/269例)、プレドニゾロン群が14%(38/266例)、ペントキシフィリン群が19%(50/258例)、併用群は13%(35/260例)であった。

 プレドニゾロン投与例(プレドニゾロン群、併用群)の非投与例(プラセボ群、ペントキシフィリン群)に対する28日死亡率のオッズ比(OR)は0.72(95%信頼区間[CI]:0.52~1.01、p=0.06)であり、有意ではないものの投与例で良好な傾向がみられた。一方、ペントキシフィリン投与例(ペントキシフィリン群、併用群)の非投与群(プラセボ群、プレドニゾロン群)に対するORは1.07(95%CI:0.77~1.49、p=0.69)と差を認めなかった。

 プレドニゾロン投与例とペントキシフィリン投与例のいずれにおいても、90日時の死亡/肝移植率に差はなく(それぞれ、OR:1.02、95%CI:0.77~1.35、p=0.87、OR:0.97、95%CI:0.73~1.28、p=0.81)、1年時の死亡/肝移植率もほぼ同等であった(それぞれ、OR:1.01、95%CI:0.76~1.35、p=0.94、OR:0.99、95%CI:0.74~1.33、p=0.97)。

 年齢や肝性脳症、白血球数などの有意な予後因子で補正後の多変量ロジスティック回帰分析では、28日死亡率に関してプレドニゾロン投与は非投与に比べ有意に良好であった(OR:0.61、95%CI:0.41~0.91、p=0.02)が、90日死亡率(OR:1.00、95%CI:0.73~1.36、p=0.98)および1年死亡率(OR:1.01、95%CI:0.74~1.39、p=0.94)については有意ではなかった。

 全体で重篤な有害事象は42%(461/1,092例)に発現し、このうち20%(220/1,092例)が死亡した。4群の重篤な有害事象の頻度は39~47%であり、大きな差はなかった。重篤な感染症は、プレドニゾロン投与例の13%(71/547例)に発現し、非投与例の7%(38/545例)に比べ有意に頻度が高かった(p=0.002)。

 著者は、「ペントキシフィリンは生存率を改善しなかったのに対し、プレドニゾロンは28日死亡率を有意ではないものの抑制する傾向がみられたが、90日および1年時の転帰は改善しなかった」とまとめ、「アルコール性肝炎の転帰には感染症の影響が大きいことから、プレドニゾロンにN-アセチルシステインを併用すると感染症が抑制されるとの報告(Nguyen-Khac E, et al. N Engl J Med 2011;365:1781-1789)は注目に値する」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)