オピオイド鎮痛薬服用中のベンゾジアゼピン系薬投与は、過剰摂取による死亡リスクの増大と用量依存的に関連することが、米国・ブラウン大学のTae Woo Park氏らによる症例コホート研究の結果、報告された。また薬剤種別の検討において、クロナゼパムと比較してtemazepam(国内未承認)の同死亡リスクが低いことも明らかにされた。BMJ誌オンライン版2015年6月10日号掲載の報告より。
米国退役軍人を対象に症例コホート研究
研究グループは、退役軍人健康管理局(VHA)2004~2009年のデータを基に、オピオイド鎮痛薬を服用する主として男性の米国退役軍人(VA)を対象に検討を行った。用量、種類、服用スケジュールなどでみたベンゾジアゼピン系薬処方パターンと、過剰摂取による死亡リスクとの関連を調べた。
対象は、オピオイド鎮痛薬服用者で過剰摂取により死亡した全VA(2,400例)と、無作為に抽出したVHAの医療サービスを利用しオピオイド鎮痛薬を投与されているVA(42万386例)であった。
主要評価項目は、あらゆる過剰摂取による死亡(意図的か否かを問わず)、または薬物中毒によるものか判断不能の死亡で、National Death Indexの死亡情報で確認した。
過剰摂取死の約半数で同時服用、用量依存にリスク増大
試験期間中、オピオイド鎮痛薬を服用していたVAのうち27%(11万2,069/42万386例)が、ベンゾジアゼピン系薬も服用していた。
過剰摂取による死亡の約半数(1,185/2,400例)が、ベンゾジアゼピン系薬とオピオイドを同時に処方されていた間に発生したものであった。
過剰摂取による死亡リスクは、ベンゾジアゼピン系薬処方歴とともに増大した。補正後ハザード比(HR)は、非処方との比較で、以前の処方歴あり群で2.33(95%信頼区間[CI]:2.05~2.64)、現在処方されている群では3.86(同:3.49~4.26)であった。
また、過剰摂取による死亡リスクは、ベンゾジアゼピン薬の1日用量増加とともに増大した。1日用量が>0~10mgとの比較において、>10~20mgのHRは1.69、>20~30mgは2.34、>30~40mgは2.65、>40mgは3.06であった。
薬剤種別にみると、クロナゼパムとの比較において、temazepamの過剰摂取による死亡リスクが最も低かった(HR:0.63、95%CI:0.48~0.82)。
ベンゾジアゼピン系薬の投与スケジュールと過剰摂取による死亡リスクとの関係はみられなかった。
(武藤まき:医療ライター)