難治性クローン病患者に対する自家造血幹細胞移植(HSCT)は通常療法と比較して、1年時点の寛解維持でみた有効性について統計的有意差は認められず、むしろ顕著な毒性との関連が示されたことを、英国・ノッティンガム大学クイーンズメディカルセンターのChristopher J. Hawkey氏らが、無作為化試験の結果、報告した。症例/シリーズ報告では、難治性クローン病患者に対してHSCTが有望である可能性が示されていたが、著者は「試験の結果、難治性クローン病患者へのHSCTの広範な適用を裏付ける所見は示されなかった」とまとめている。JAMA誌オンライン版2015年12月15日号の掲載報告。
1年時点の寛解維持を評価
研究グループは、並行群間無作為化試験にて、難治性クローン病患者に対するHSCTの有効性を検討した。試験は2007年7月~11年9月に欧州11ヵ所の移植ユニットで実行され、最終フォローアップは13年3月であった。
被験者は、18~50歳の難治性クローン病患者で、QOLが損なわれているが手術不適応であり、免疫抑制薬または生物学的製剤およびコルチコステロイドによる治療を3回以上受けていた。
被験者全員に幹細胞動員を行った後、免疫アブレーション+HSCTを受ける群(HSCT群)または対照群(HSCTの施術を1年後とする)に1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。両群には必要に応じて、クローン病の標準治療が行われた。
主要アウトカムは寛解維持で、「3ヵ月間以上臨床的寛解を維持(クローン病活動指数[CDAI;範囲0~600]が150未満)」「3ヵ月間以上積極的治療なし(コルチコステロイドまたは免疫抑制薬もしくは生物学的製剤を未使用)」「1年時点で病勢の活動性なし[消化管に疾患活動性(びらん)を認める内視鏡的または画像検査上のエビデンスが認められない]」からなる複合主要エンドポイントで評価した。副次アウトカムは、個別にみた主要エンドポイント、その他の疾患活動性の評価、ラボ検査の結果、QOLや機能的評価の結果、消化管画像検査結果などであった。
通常療法と比較して有意差みられず
被験者数はHSCT群23例、通常療法(対照)群22例であった。結果、1年時点の寛解維持が認められたのは、HSCT群2例(8.7%) vs.対照群1例(4.5%)で、両群間に統計的有意差はみられなかった(絶対差:4.2%、95%信頼区間[CI]:-14.2~22.6%、p=0.60)。
主要エンドポイントを個別にみると、「積極的治療なし」はHSCT群14例(60.9%) vs.対照群5例(22.7%)で両群間に統計的有意差がみられた(同:38.1%、9.3~59.3%、p=0.01)。しかし、「臨床的寛解」はHSCT群8例(34.8%) vs.対照群2例(9.1%)で統計的有意差はみられず(同:25.7%、1.1~47.1%、p=0.52)、「病勢の活動性なし」も、HSCT群8例(34.8%) vs.対照群2例(9.1%)で有意差はみられなかった(同:25.7%、1.1~47.1%、p=0.54)。
重篤有害事象は、HSCT群76件(患者19例)、対照群38件(15例)。HSCT群では1例の死亡が報告されている。