臨床的に安定している左室駆出率保持心不全(HFPEF)の高齢肥満患者に対して、20週間にわたるカロリー食事制限もしくは有酸素運動トレーニングによる介入は、運動耐容能を改善するとの無作為化試験の結果が、米国・ウェイクフォレスト大学医学部のDalane W. Kitzman氏らにより報告された。介入効果は相加的に認められ、またQOLへの影響はみられなかった。心不全を有する高齢患者の割合は高く、またHFPEF患者の80%以上が過体重であるという。運動耐容能の低下は慢性HFPEF患者でみられる主要な症状で、QOL低下の重大要素とされている。JAMA誌2016年1月5日号掲載の報告。
カロリー制限食または有酸素運動の介入を20週間
試験は2×2要因法にて、2009年2月~14年11月に、米国都市部の大学病院で行われた。577例がスクリーニングを受け、最終的に100例の高齢肥満患者を対象に、20週間にわたるカロリー制限(食事群)または有酸素運動(運動群)もしくは両方の介入(運動+食事群)を行った(2週ごとに電話で注意喚起)。
主要アウトカムは2つで、最大酸素摂取量(VO
2;mL/kg/分)で測定した運動耐容能改善、およびMinnesota Living with Heart Failure(MLHF)質問票(スコア範囲:0~105、高スコアほど心不全関連QOL低下を示す)とした。
付加的な運動耐容能の改善効果がみられ、QOLへは影響なし
被験者100例は、平均年齢67(SD 5)歳、BMI 39.3(5.6)、HFPEFは臨床的に安定していた。26例が運動群に、24例が食事群に、25例が運動+食事群、25例が対照群に無作為に割り付けられ、合計で92例が試験を完了した。運動介入への参加率は84%(SD:14%)、食事介入のアドヒアランスは99%(SD:1%)であった。
主要効果分析の結果、最大VO
2は両介入群ともに有意な増大が認められた。運動群は1.2mL/kg/分(95%信頼区間[CI]:0.7~1.7)、食事群は1.3mL/kg/分(同:0.8~1.8)であった(両群ともp<0.001)。また、運動+食事群の効果は相加的にみられ、最大VO
2は2.5mL/kg/分であった。
一方、MLHF質問票スコアについては、両群とも統計的に有意な変化はみられなかった。食事群のスコアの変化は-6(95%CI:-12から1、p=0.08)、運動群は-1(-8~5、p=0.70)であった。
最大VO
2の変化は、BMI変化と正の相関がみられ(r=0.32、p=0.003)、また大腿筋(筋肉内脂肪)変化との正の相関がみられた(r=0.27、p=0.02)。
試験に関連した重大有害事象の報告はなかった。
なお、体重は、食事群が7%(7kg、SD 1)減量し、運動群は3%(4kg、SD 1)減量、運動+食事群は10%(11kg、SD 1)の減量がみられた。