ICUでのチェックリスト等の介入で院内死亡率は改善するか/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2016/05/06

 

 集中治療室(ICU)の重症患者に対するケアの質を改善するため、毎日のチェックリスト・目標設定・臨床医の指示による多面的な介入を行っても、院内死亡率は減少しない。ブラジル・HCor病院のAlexandre B. Cavalcanti氏らが、観察研究とクラスター無作為化比較試験から成るCHECKLIST-ICU研究の結果、報告した。ICUでのチェックリスト等の導入による多面的質改善介入の有効性に関する研究は、これまですべて高所得国で実施されたものであり、無作為化試験によるエビデンスはなく、ブラジルのような低~中所得国での有効性は不明であった。JAMA誌2016年4月12日号掲載の報告。

ICU 118施設でクラスター無作為化比較試験を実施
 CHECKLIST-ICU研究は、ブラジル118施設のICUで実施された。第1期として、2013年8月~14年3月に、職場風土・ケアの手順・臨床転帰に関するベースラインデータを評価する観察研究が行われた後、第2期として2014年4月~11月にクラスター無作為化試験が行われた。各期には、ICU当たり48時間以上入院した連続60例が登録された。

 参加したICUは多面的質改善介入群(介入群)と通常ケア群(対照群)に無作為に割り付けられた。介入群では、11のケア(人工呼吸器関連肺炎や尿路感染症予防など)に関してフォローアップについての医師による指示を伴う毎日のチェックリストや目標設定等を含む介入を行った。

 主要評価項目は、院内60日死亡率、副次評価項目はケア順守、安全環境、臨床イベントなどであった。

院内死亡率は、多面的質改善介入と通常ケアとで有意差なし
 第1期で6,877例(平均59.7歳、女性46.8%)、第2期で6,761例(59.6歳、女性45.8%)が登録された。

 第2期(介入群3,327例[59施設]、対照群3,434例[59施設])において、60日死亡率は介入群32.9%、対照群34.8%であり、両群に有意差はなかった(オッズ比:1.02、95%信頼区間[CI]:0.82~1.26、p=0.88)。

 事前に定めた副次的評価項目20項目のうち、6項目(低1回換気量、過鎮静回避、中心静脈カテーテルの使用、尿道カテーテルの使用、チームワークの認識、患者安全性の認識)は介入群で有意に改善した(多重比較の補正なし)。一方、残りの14項目(ICU死亡率、中心静脈ライン関連血流感染、人工呼吸器関連肺炎、尿路感染、平均人工呼吸器離脱期間、平均ICU在室期間、平均在院期間、ベッド挙上30度以上、静脈血栓塞栓症予防など)は両群間に有意差はなかった。

 今回の研究結果について著者は、介入期間が限られ、対象を48時間以上ICU滞在患者に限定するなど研究には限界があり、今回の結果は安全風土レベルが異なる状況では当てはまらない可能性があると指摘している。