Helicobacter pylori(ピロリ菌)の除菌療法は、ビスマス4剤療法(クエン酸ビスマス三カリウム+ランソプラゾール+テトラサイクリン+メトロニダゾール)のほうが、従来の3剤療法に比べ、除菌率が約7%有意に高く、第1選択として好ましいことが示された。背景には、クラリスロマイシン耐性のピロリ菌の増加があるという。台湾国立大学病院のJyh-Ming Liou氏らが、成人感染者1,620例を対象に行った非盲検無作為化比較試験の結果、明らかにした。Lancet誌オンライン版2016年10月18日号で発表した。
被験者を3群に分け、レジメンを比較
研究グループは、2013年7月~2016年4月にかけて、台湾の9医療機関を通じ、20歳超のピロリ菌感染者1,620例を対象に試験を行った。登録被験者は、迅速ウレアーゼ試験、組織学的、血液培養または血清検査のうち2つ以上の試験で陽性を示したか、胃がんスクリーニングの尿素呼気テストで
13C尿素値が陽性の患者だった。
被験者を無作為に3群に分け、第1群には併用療法(ランソプラゾール30mg+アモキシシリン1g、クラリスロマイシン500mg、メトロニダゾール500mgのいずれかを併用、1日2回)を10日間、第2群にはビスマス4剤療法(クエン酸ビスマス三カリウム300mg 1日4回+ランソプラゾール30mg 1日2回+テトラサイクリン500mg 1日4回+メトロニダゾール500mg 1日3回)を10日間、第3群には3剤療法(ランソプラゾール30mg+アモキシシリン1g+クラリスロマイシン500mg、いずれも1日2回)を14日間投与した。
主要評価項目は、intention-to-treat集団で評価した第1選択としてのピロリ菌除菌率だった。
除菌率、ビスマス4剤療法群は90%、3剤療法群は84%
その結果、ビスマス4剤療法群の除菌率は90.4%(540例中488例、95%信頼区間[CI]:87.6~92.6)、併用療法群は85.9%(540例中464例、同:82.7~88.6)、3剤療法群は83.7%(540例中452例、同:80.4~86.6)だった。
ビスマス4剤療法群の除菌率は、3剤療法群に比べ有意に高率だった(群間差:6.7%、95%CI:2.7~10.7、p=0.001)。一方、併用療法群に対する有意差はなかった。また、併用療法群と3剤療法群の間にも、除菌率に有意差はなかった。
有害事象発生率は、ビスマス4剤療法群が67%、併用療法群が58%、3剤療法群が47%だった。
これらの結果を踏まえて著者は、「クラリスロマイシン耐性ピロリ菌の罹患率が増加している現状では、ビスマス4剤療法群が除菌の第1選択として望ましい。10日間の併用療法は至適とはいえず、より長期の投与期間を考慮すべきであろう」と結論している。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)