主要な飽和脂肪酸(SFA)の多量摂取は、冠動脈性心疾患リスクを増大することが、大規模コホート試験で確認された。また、摂取SFAのうち大半を占めるラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の摂取エネルギーを、不飽和脂肪酸や植物性タンパク質などに置き換えると、同発症リスクは有意に低下し、なかでもパルミチン酸の置き換え低減効果が大きいことも示された。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のGeng Zong氏らが、医療従事者追跡調査(Health Professionals Follow-up Study)と看護師健康調査(Nurses’ Health Study)の男女2つの大規模コホートについて分析し明らかにしたもので、これまで大規模コホート試験で、個別の飽和脂肪酸と冠動脈性心疾患の関連を示した研究結果はほとんどなかったという。BMJ誌2016年11月23日号掲載の報告。
米国男女大規模コホート2試験で検証
研究グループは、1984~2012年の看護師健康調査に参加した女性7万3,147例と、1986~2010年の医療従事者追跡調査に参加した男性4万2,635例の2つのコホートについて、前向き縦断コホート試験を行った。被験者は、ベースラインで主な慢性疾患が認められない人とした。
被験者のうち、追跡期間中に冠動脈性心疾患の診断を受けたことを自主申告した7,035例について、診療記録で確認をした。また、関連死については、全米死亡記録(NDI)や近親者、郵便局から裏付けをとった。
4種の飽和脂肪酸摂取量のCHDリスク、最高五分位群 vs.最小五分位群は1.18倍
飽和脂肪酸が追跡期間中の総エネルギー摂取量に占める割合は、9.0~11.3%で、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の4種がその大部分を占めた。これら4種の飽和脂肪酸は、冠動脈性心疾患の発症と強い相関関係があり、スピアマンの順位相関係数は0.38~0.93(すべてp<0.001)だった。
生活習慣要因と総エネルギー摂取量について多変量補正後、それぞれの飽和脂肪酸の摂取量の最高五分位群 vs.最小五分位群のハザード比は、ラウリン酸が1.07(95%信頼区間[CI]:0.99~1.15、傾向p=0.05)、ミリスチン酸が1.13(1.05~1.22、傾向p<0.001)、パルミチン酸が1.18(1.09~1.27、傾向p<0.001)、ステアリン酸が1.18(1.09~1.28、傾向p<0.001)、4種複合飽和脂肪酸で1.18(同:1.09~1.28、傾向p<0.001)だった。
4種の飽和脂肪酸から摂取するエネルギーの1%相当分を、多価不飽和脂肪に置き換えることで、同ハザード比は0.92(p<0.001)に、また1価不飽和脂肪酸に置き換えると0.95(p=0.08)、全粒炭水化物では0.94(p<0.001)、植物性タンパク質では0.93(p=0.001)とリスクは減少することが示された。また、単体ではパルミチン酸を置き換えることによるリスク低下が最も大きく、ハザード比は多価不飽和脂肪に置き換えると0.88(p=0.002)、1価不飽和脂肪酸0.92(p=0.10)、全粒炭水化物0.90(p=0.01)、植物性タンパク質0.89(p=0.01)だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)