胎児脳異常の診断に子宮内MRIが有用/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2016/12/27

 

 子宮内MRI(iuMRI)は、胎児の脳異常の診断精度(diagnostic accuracy)と診断確度(diagnostic confidence)を改善し、多くの胎児で臨床管理の変更をもたらすとともに、妊婦の受容性も優れることが、英国・シェフィールド大学のPaul D Griffiths氏らが実施したMERIDIAN試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年12月14日号に掲載された。胎児脳異常の診断では、超音波検査の補助手段としてiuMRIが有望とされるが、相対的な診断能はよく知られていないという。

胎児570人で、超音波とiuMRIを比較するコホート研究
 MERIDIANは、iuMRIによる胎児脳異常の出生前診断の精度と確度の改善効果を検証するとともに、臨床効果や患者受容性を評価するプロスペクティブな多施設共同コホート研究(英国国立衛生研究所[NIHR]健康技術評価プログラムの助成による)。

 対象は、年齢16歳以上で、妊娠18週以降に超音波検査で胎児の脳異常が疑われ、iuMRIが禁忌でない妊婦であった。iuMRIは、超音波施行後14日以内に行うこととした。反復走査は容認されたが、解析には初回走査の結果のみが用いられた。

 得られた所見は、2つの評価委員会が別個にレビューし、アウトカム診断と比較することで診断精度および診断確度を評価した。アウトカム基準診断(outcome reference diagnoses:ORD)は、妊娠が継続され、子供が生存している場合は、生後6ヵ月までに臨床的な目的で行われた出生後神経画像検査で神経解剖学的に確定した。また、妊娠中絶、死産、新生児死亡の場合は、剖検または死後MRI、あるいはこれら双方で確認した。

 診断確度の評価は、確度の程度を、ORDから得た正診率と比較することで行った。主診断(独立評価委員会が予後への影響が最も大きいと判定したもの)の診断確度をLikertスケールで評価し、高確度(70%、90%)および低確度(10%、30%、50%)に変換した。

 2011年7月29日~2014年8月31日に、英国の6施設で患者登録が行われた。妊婦565例(胎児570例)が解析の対象となった。

95%以上が「次回も、異常があればiuMRIを受ける」
 妊婦の平均年齢は24.5歳(SD 4.5)、超音波検査からiuMRI施行までの期間は平均5.8日(SD 3.5)で、71%が1週間以内に実施されていた。単胎妊娠児が539例(95%)、多胎妊娠児が31例(5%)であった。胎児コホートは、妊娠18~<24週の群(369例[65%])と、24週以降の群(201例[35%])に分けて解析した。

 全体の診断精度は、超音波の68%(387/570例)に対し、iuMRIは93%(529/570例)と有意に優れた(差:25%、95%CI:21~29、p<0.0001)。

 超音波と比較して、iuMRIの診断精度は、妊娠18~<24週群で23%(70 vs.92%、95%信頼区間[CI]:18~27、p<0.0001)、妊娠24週以降群では29%(64 vs.94%、95%CI:23~36、p<0.0001)優れた。超音波の診断精度は、妊娠18~<24週群よりも妊娠24週以降群が低かった(70 vs.64%)が、iuMRIの診断精度は両群でほぼ同じであった(92 vs.94%)。

 超音波とiuMRIがいずれも正診であったのは68%(385/570例)、いずれも誤診であったのは7%(39/570例)であった。超音波で誤診の胎児のうち、144例(25%)がiuMRIで正しい診断に修正された。超音波が正診で、iuMRIが誤診であった胎児は2例(<1%)だった。

 主診断の診断確度が高確度の割合は、超音波の82%(465/570例)に比べ、iuMRIは95%(544/570例)と高かった。低確度の割合は、超音波の18%に比し、iuMRIは5%と低かった。

 ORDのデータが得られなかった胎児を含めた783人の解析では、iuMRIは49%(387/783例)で新たな診断情報を、少なくとも20%(157/783例)で予後情報の変化を、3例に1例以上で臨床管理の変更をもたらした。

 また、95%以上の女性が、「次回の妊娠時に胎児の脳異常が見つかった場合にも、iuMRI検査を受けるだろう」と答え、高い患者受容性が示された。

 著者は、「超音波検査で脳異常が疑われるすべての胎児は、カウンセリングや管理の決定の際に、より優れた情報を提供するために、iuMRIを受けるべきと考えられる」としている。

(医学ライター 菅野 守)