脳室内出血に対し、脳室ドレーンを介したアルテプラーゼ注入による血腫洗浄を行っても、生理食塩水での洗浄と比較して機能の改善は認められなかった。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のDaniel F Hanley氏らが、世界73施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験CLEAR IIIの結果を報告した。脳室内出血は、死亡率が50%を超え、機能転帰が良好な生存者は20%足らずと報告されているが、これまでメタ解析などで血腫の除去が閉塞性水頭症の軽減や神経毒性の減少をもたらし生存率や機能転帰を改善することが示唆されていた。今回の検討では、脳室ドレーンを介したアルテプラーゼ注入の安全性は確認されたことから、著者は「今後、アルテプラーゼにより迅速かつ完全に脳室内の血腫を除去し得るよう外科的カテーテル留置法を改良し、機能回復について検討する必要がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年1月9日号掲載の報告。
500例で、アルテプラーゼ vs.生理食塩水投与で機能改善を比較
CLEAR III(Clot Lysis:Evaluating Accelerated Resolution of Intraventricular Hemorrhage Phase III)は、出血量が30mL未満の非外傷性脳出血患者で、集中治療室にて状態が安定しており、脳室内出血により第3または第4脳室が閉塞し脳室ドレーンを留置した患者を対象に行われた。被験者を、アルテプラーゼ群(脳室ドレーンを介して8時間間隔でアルテプラーゼ1mgを最大12回注入)、またはプラセボ群(0.9%生理食塩水を同様に注入)に1対1の割合で無作為に割り付け、投与期間中24時間ごとにCTを撮影した。
主要有効性アウトカムは、良好な機能アウトカム(180日時点の修正ランキンスケール[mRS]が3点以下)とした。
2009年9月18日~2015年1月13日の間に500例が無作為化され、アルテプラーゼ群で249例中246例、プラセボ群で251例中245例が解析対象となった。
アルテプラーゼ脳室内投与は安全であったが、機能改善効果は示されず
良好な機能アウトカムを示した患者の割合は、両群で同程度であった(アルテプラーゼ群48% vs.プラセボ群45%、リスク比[RR]:1.06、95%信頼区間[CI]:0.88~1.28、p=0.554)。脳室内出血量と視床出血で補正後の両群差は3.5%で有意差はなかった(RR:1.08、95%CI:0.90~1.29、p=0.420)。
180日時点の致死率は、アルテプラーゼ群のほうが有意に低かったが(18% vs.29%、ハザード比:0.60、95%CI:0.41~0.86、p=0.006)、mRS 5点(寝たきりなどの重度障害)の割合も有意に多かった(17% vs.9%、RR:1.99、95%CI:1.22~3.26、p=0.007)。脳室炎(7% vs.12%、RR:0.55、95%CI:0.31~0.97、p=0.048)
や重篤な有害事象(46% vs.60%、RR:0.76、95%CI:0.64~0.90、p=0.002)は、アルテプラーゼ群のほうが出現頻度は低かったが、症候性出血の割合は同程度であった(2% vs.2%、RR:1.21、95%CI:0.37~3.91、p=0.771)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)