ペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)を装着した患者へのMRI検査の実施は、長らく禁忌とされてきたが、検査前後の動作確認と、検査前の適切な再プログラミングを行うことで、磁場強度1.5テスラのMRIは安全に実施可能なことが判明した。MRI検査中の死亡や心室性不整脈や装着機器の故障は、いずれも認められなかった。米国・スクリプス研究所のRobert J Russo氏らが、ペースメーカーやICDを装着する1,500例を対象に行った前向き試験で明らかにしたもので、NEJM誌2017年2月23日号で発表した。
MRI検査中の死亡、ジェネレータやリードの故障などを調査
研究グループは2009~14年にかけて、米国19ヵ所の医療機関を通じ、ペースメーカーまたはICDを装着した患者で、胸部以外については磁場強度1.5テスラMRIが臨床的に適応とされた、それぞれ1,000例(818人)と500例(428人)を対象に前向き試験を行った。両デバイスについて、MRI検査の前後に標準的プロトコルに準じた動作確認を行い、MRI検査前に再プログラミングを行った。
被験者の平均年齢は、ペースメーカー群が72.5歳、ICD群が65.1歳だった。
主要エンドポイントは、MRI検査中の死亡、ジェネレータやリードの故障、不整脈誘発、キャプチャーの失敗、電気的リセット。副次的エンドポイントは、デバイスの設定変更とした。
自然停止の心房細動・心房粗動、部分的電気的リセットが各6件
その結果、MRI検査中の死亡、リードの故障、キャプチャーの失敗、心室性不整脈は認められなかった。MRI検査後にICDジェネレータの動作確認ができず、迅速な交換を要した事例が1件あったが、このICD例は、MRI検査前に適切なプログラミングが行われていなかった。
自然停止した心房細動や心房粗動は6件、部分的電気的リセットは6件だった。
リード抵抗、ペーシング閾値、バッテリー電圧、P波・R波の振幅が、いずれも事前に規定した閾値を上回った例は、少数にとどまった。また、MRIの再施行は、有害事象の増加と関連していなかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)