ナトリウムや多価不飽和脂肪酸、ナッツ類、砂糖入り飲料、赤身肉などの不適切量摂取が、心臓病や2型糖尿病といった心血管代謝疾患による死因の約45%を占めることが、米国成人を対象に行った大規模試験の国民健康・栄養調査(NHANES)の結果、明らかにされた。米国・タフツ大学のRenata Micha氏らによる検討で、JAMA誌2017年3月7日号で発表した。米国の個人レベルでの食事因子と特異的心臓病などとの関連については、これまで十分な検討は行われていなかった。
果物、野菜、ナッツ類、全粒穀物などの摂取と心血管代謝疾患死亡の関連を分析
研究グループは、NHANES試験の参加者合計1万6,000例超(1999~2002年が8,104例、2009~12年が8,516例)を対象に、食事因子と心血管代謝疾患による死亡との関連を検証した。調査対象とした食事因子は、果物、野菜、ナッツや種、全粒穀物、未加工の赤身肉(牛肉・羊肉など)、加工肉、砂糖入り飲料、多価不飽和脂肪酸、シーフード・オメガ3脂肪酸、ナトリウムだった。
主要評価項目は、2012年の心臓病、脳卒中、2型糖尿病による予測死亡率とした。疾患別や年齢・性別による死亡率や、2002~12年にかけての傾向などについても分析した。
ナトリウムの多量摂取が心血管代謝疾患死因の9.5%
2012年の米国成人の心血管代謝疾患死亡者数は70万2,308例で、そのうち心臓病によるものは50万6,100例(冠動脈性心疾患37万1,266例、高血圧性心疾患3万5,019例、その他9万9,815例)、脳卒中は12万8,294例(虚血性1万6,125例、出血性3万2,591例、その他7万9,578例)、2型糖尿病は6万7,914例だった。
このうち45.4%にあたる31万8,656例については、食事因子摂取が最適ではなかったことと関連していると推定された。より詳しくみてみると、男性の心血管代謝疾患による死亡の48.6%、女性の41.8%、若年層(25~34歳)の64.2%、75歳以上の35.7%が食事因子との関連が推察された。また、人種別では、アフリカ系が53.1%、ヒスパニック系が50.0%、白人系が42.8%。さらに教育レベル別にみると、低:46.8%、中:45.7%、高:39.1%との結果が示された。
食事因子が原因と考えられる死亡数が最も多かったのは、ナトリウムの多量摂取で、2012年の死亡数は6万6,508例であり、心血管代謝疾患死の9.5%を占めていた。次いでナッツ・種の少量摂取が5万9,374例(8.5%)、加工肉の多量摂取が5万7,766例(8.2%)、シーフード・オメガ3脂肪酸の少量摂取は5万4,626例(7.8%)、野菜の少量摂取は5万3,410例(7.6%)、フルーツの少量摂取は5万2,547例(7.5%)、砂糖入り飲料の多量摂取は5万1,694(7.4%)だった。
また2002~12年にかけて、人口補正後の年間心血管代謝疾患死亡数は26.5%減少した。この減少の最大の要因は、多価不飽和脂肪酸少量摂取の減少(相対変化率:-20.8%)、ナッツ・種少量摂取の減少(同:-18.0%)、砂糖入り飲料の多量摂取の減少(同:-14.5%)だった。一方で、最大の増加要因は、未加工赤身肉の摂取だった(同:14.4%)。
研究グループは、「今回の結果は、プライオリティの確認、公衆衛生プランのガイドや、食習慣の変化や健康増進の戦略策定に役立つであろう」とまとめている。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)