慢性心不全患者は余命を過大評価する傾向がある

提供元:ケアネット

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公開日:2008/06/17

 

長期生存が難しい慢性心不全患者の余命について、患者自身がどのように予想しているかは検討されてこなかった。そこで、心不全患者の生存に関する予想を定量化し、患者の予想をモデル予測と比較、さらに患者自身の予想と症例モデルによる余命予測の食い違いに関連する因子を検証する研究を、米国・デューク大学メディカルセンター臨床研究所のLarry A. Allen氏らが行った。結果、「患者は自分たちの余命を、モデル予測よりかなり過大評価する傾向がある」と報告している。JAMA誌2008年6月4日号より。

122例を3年間追跡調査し患者予想の割合を数値化
デューク大学が2004年7~12月に「Heart Failure Disease Management Program」で行った、患者に対する前向きの面接調査結果を、2008年2月に追跡調査した。コホートは患者122例(平均年齢62歳、アフリカ系アメリカ人47%、NYHA分類III度-IV度の患者42%)で構成されていた。

患者予想余命は視覚的アナログ・スケールを用いて得た。モデル予測余命は、「Seattle Heart Failure Model」で算出。年齢と性別のみからの保険統計予測余命は、生命表から算出した。実際の生存期間は、診療記録のレビューと社会保障死亡記録を検索して確定した。

主要評価項目は、モデル予測余命に対する患者予想余命の割合(LER)とした。

患者はモデル予測より余命を3年長く予想
結果、患者はおおむね、自らの余命をモデル予測余命よりも過大評価していることがわかった。患者予想余命の中央値は13.0年、モデル予測余命は10.0年。LERの中央値は1.4(四分位数間領域:0.8~2.5)で、LERが高くなる最も重要な予測因子は、若年齢、NYHA分類の進行、低い駆出率、抑うつ症状の少ないことであった。なお当初コホートの29%は、中央値3.1年の追跡期間中に死亡している。

LERの高率と生存期間改善には何の関連性も見いだせなかった(LER一致と比較した過大評価の調整ハザード比:1.05、95%信頼区間:0.46~2.42)。

Allen氏は「心不全の外来患者はモデル予測と比べて自分たちの余命を、かなり過大評価する傾向があった。生存期間に違いが生じることは、先進治療の方向と終末期の生き方に関する意思決定に影響を及ぼすため、こうした余命予測の不一致の原因は、さらに検証されなければならない」とまとめている。

(朝田哲明:医療ライター)