ベンゾジアゼピン系薬の服用について、服用開始6ヵ月の全死因死亡リスクは増大しないことが示された。米国・ハーバード・メディカル・スクールのElisabetta Patorno氏らが、ベンゾジアゼピン系薬服用者約125万例と、高次元傾向スコアでマッチさせた非服用者を対象に行った試験で明らかにしたもので、BMJ誌2017年7月6日号で発表した。これまでに、ベンゾジアゼピン系薬の服用は、短期間であっても、死亡リスクが3~4倍に増大するというエビデンスが発表されていたが、それを否定する結果となった。なお、サブグループ解析では、服用開始12ヵ月、48ヵ月の死亡リスクや、65歳未満の患者の死亡リスクなどについては、4~9%のわずかな増大が認められている。
匿名化された大規模商用医療データベースを基に調査
研究グループは、匿名化された大規模米国商用医療データベースOptum Clinformatics Datamartを基に後ろ向きコホート試験を行い、ベンゾジアゼピン系薬の服用と全死因死亡リスクとの関連を検証した。
具体的には、2004年7月~2013年12月にかけて診察を受け、14日以内にベンゾジアゼピン系薬の服用を開始した125万2,988例と、同期間に診察を受け高次元傾向スコアで1対1にマッチさせた非服用者を比較した。
主要評価項目は、追跡期間6ヵ月間の全死因死亡だった。死亡は、Social Security Administration Death Master Fileで確認した。また治療バリアと交絡に対処するため、参加者は、指標日(ベンゾジアゼピン系薬服用開始日、ベンゾジアゼピン系薬非服用者については選択的な受診日)の前90日間と91~180日間に1回以上のあらゆる処方を受けていることとした。また、高次元傾向スコアは300以上の共変量を基に算出した。
服用開始48ヵ月間で5%、65歳未満では9%、死亡リスク増大
6ヵ月の追跡期間における死亡数は、ベンゾジアゼピン系薬群が5,061例、対照群が4,691例で、死亡率はそれぞれ9.3/1,000人年に、9.4/1,000人年で同等だった(ハザード比:1.00、95%信頼区間[CI]:0.96~1.04)。
しかしサブグループ解析では、死亡リスクの増大が認められたものもあった。たとえば服用開始から12ヵ月および48ヵ月の死亡リスクは、ベンゾジアゼピン系薬の服用開始者は、非服用者に比べ、死亡リスクはわずかだが有意に増大した(12ヵ月のハザード比:1.04、48ヵ月のハザード比:1.05)。また、65歳未満の場合や、短時間作用型ベンゾジアゼピン系薬を服用した場合で、いずれも死亡リスクはわずかだが有意に増大した(65歳未満のハザード比:1.09、短時間作用型のハザード比:1.06)。
また、副次解析の検討で、高次元傾向スコアで1対1にマッチさせた、SSRI服用開始群とベンゾジアゼピン系薬服用開始群の比較においては、ベンゾジアゼピン系薬服用開始群で9%(95%CI:3~16)のリスク増大が認められた。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)