大脳型副腎白質ジストロフィー(Cerebral Adrenoleukodystrophy:CALD)に対し、Lenti-D遺伝子治療が同種造血幹細胞移植に代わる安全で有効な治療法となる可能性が示された。米国・ハーバード・メディカル・スクール/マサチューセッツ総合病院のFlorian Eichler氏らが、第II/III相単群非盲検臨床試験「STARBEAM試験」の中間解析結果を報告した。副腎白質ジストロフィー(ALD)はABCD1遺伝子変異によるX連鎖性遺伝性疾患で、CALDは脱髄と神経変性を特徴としている。これまでは同種造血幹細胞移植が、神経機能の喪失と死亡につながる疾患進行を食い止める唯一の方法であった。結果を踏まえて著者は、「さらなる追跡調査で、奏効期間や長期安全性を完全に評価することが必要である」とまとめている。NEJM誌オンライン版2017年10月4日号掲載の報告。
CALD発症早期の17例において、24ヵ月後の生存と重度機能障害を評価
STARBEAM試験の対象は、17歳以下のCALD男児で、MRIでガドリウム造影効果を認めた発症早期の17例であった。患者から得たCD34+細胞に、elivaldogene tavalentivec(Lenti-D)レンチウイルスベクターを用いて
ABCD1遺伝子を導入し、自家移植を行った。
今回の中間解析では、移植片対宿主病(GVHD)の発症、死亡、主要機能障害、神経機能の変化、MRI上の病巣範囲の変化について評価した。主要エンドポイントは24ヵ月時の重度機能障害のない生存であった。
Lenti-D遺伝子治療後、80%以上が生存
中間解析における追跡期間中央値は29.4ヵ月(範囲:21.6~42.0)であった。全例で移植後にマーカー遺伝子細胞が認められ、遺伝子の挿入部位解析において既知のがん遺伝子の優先的組み込みやクローン増殖は検出されなかった。また、全例でALDタンパクが確認された。治療関連死亡やGVHDの報告はなかった。
17例中15例(88%)が、わずかな臨床症状のみで重度機能障害はなく生存していた。1例は急速に神経機能が悪化し、疾患進行のため死亡した。別の1例は、MRI上で疾患進行が確認され、同種造血幹細胞移植を実施するために本試験から離脱し、後に移植関連合併症のため死亡した。
著者は今後の課題として、「長期的な追跡調査とより多くの症例数で、Lenti-Dレンチウイルスベクターを用いた遺伝子治療の遺伝毒性の低さ、臨床的有効性および安全性の裏付けをとる必要がある」との見解を述べている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)