多発性硬化症にクレマスチンフマル酸塩は有望/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2017/10/19

 

 多発性硬化症(MS)における慢性脱髄性損傷の治療として、ミエリンの修復をターゲットとする薬剤の安全性と有効性を検討した初の無作為化比較試験「ReBUILD試験」の結果が報告された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のAri J. Green氏らが、慢性脱髄性視神経症を呈するMS患者を対象に、クレマスチンフマル酸塩について行った検討で、安全性と有効性が認められたという。MSは、ミエリンの免疫メディエーターの破壊と進行性の神経軸索損失で特徴づけられる中枢神経系(CNS)の炎症性変性疾患である。CNSのミエリンは、オリゴデンドロサイト細胞膜の伸長によるもので、クレマスチンフマル酸塩がオリゴデンドロサイトの分化を刺激する可能性が、in vitro、動物モデル、ヒト細胞の試験で示唆されていた。Lancet誌オンライン版2017年10月10日号掲載の報告。

クレマスチンフマル酸塩の有効性と安全性の分析のためクロスオーバー試験を150日間実施
 ReBUILD試験は、MS患者の治療薬としてのクレマスチンフマル酸塩の有効性と安全性を分析するため、単施設プラセボ対照無作為化二重盲検クロスオーバーにて行われた。被験者は、安定的免疫抑制療法を受ける慢性脱髄性視神経症を伴う再発MS患者50例で、国際的パネル基準により診断を受けてから15年未満だった。

 研究グループは、2014年1月~2015年4月にかけて被験者を無作為に2群に分け、一方には当初90日間にわたりクレマスチンフマル酸塩(5.36mg 1日2回)を投与し、その後60日間はプラセボを投与した。もう一方の群には、プラセボを90日間投与し、その後クレマスチンフマル酸塩(5.36mg 1日2回)を60日間投与した。

 主要アウトカムは、全視野図形反転刺激視覚誘発電位によるP100レイテンシー延長の短縮だった。

クレマスチンフマル酸塩の投与は長期的損傷後もミエリン修復の可能性を示唆
 被験者全例が試験を完了した。クロスオーバー試験として分析した結果、クレマスチンフマル酸塩投与により、レイテンシー延長は1.7ミリ秒/眼(95%信頼区間:0.5~2.9、p=0.0048)の短縮が認められ、主要有効性エンドポイントの達成が認められた。

 なお、クレマスチンフマル酸塩の投与は倦怠感と関連していたものの、重篤な有害事象は報告されなかった。

 同研究グループは試験結果を受けて、「ミエリンの修復は、長期にわたる損傷後も可能であることが示唆された」とまとめている。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 森本 悟( もりもと さとる ) 氏

慶應義塾大学医学部生理学教室 特任講師

東京都健康長寿医療センター 脳神経内科

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