満月はオートバイでの事故死のリスク増大と関連することを、カナダ・Sunnybrook Health Science CentreのDonald A. Redelmeier氏らが、地域住民を対象とした横断分析の結果で報告した。近年、オートバイの死亡事故が増加しており、米国では交通事故死の7分の1を占めている。死亡事故を招いた主な原因は一瞬の気の緩みで、死亡に至ったオートバイ衝突事故における原因の大半でもある。研究グループは、「人は自然と満月に気が引かれるもので、それがオートバイの衝突事故を招いているのではないか」と仮説を立て検証を行った。結果について著者は、「交絡因子の影響は除外できていないものの、このリスクに関心を持つことで、満月の夜のオートバイ運転には注意するよう喚起し、一瞬の気の緩みの危険性を認識するのに役立つだろう」と述べている。BMJ誌2017年12月11日号掲載のクリスマス特集での報告。
夜間のオートバイ死亡事故、約1万3,000件について解析
研究グループは、満月がオートバイ事故死の一因となるかを調べる目的で、1975~2014年の40年間に米国で発生した夜間(午後4時~午前8時)のオートバイ死亡事故について解析した。主要解析には二項検定を用い、また同様の解析を英国、カナダ、オーストラリアでも行った。
夜間(1,482日)のオートバイ死亡事故は、計1万3,029件発生していた。死亡事故の背景としては、正面衝突、ヘルメット未着用、排気量の大きなストリートバイク、事故の発生場所が地方、ライダーに中年男性(平均年齢32歳)が多いことが特徴であった。
とくにスーパームーンの夜に増加
死亡事故の発生は、満月の夜494日において4,494件(1夜当たり9.10件)、満月ではない夜988日において8,535件(1夜当たり8.64件)であった。満月ではない夜に対する満月の夜の相対リスクは1.05(95%信頼区間[CI]:1.02~1.09、p=0.005)、条件付きオッズ比は1.26(95%CI:1.17~1.37、p<0.001)であった。
満月ではない夜と比べて満月の夜の死亡事故は、40年間に絶対数で226件増加し、この増加は、幅広いタイプのライダー、バイク、事故でみられたが、とくにスーパームーンの夜で増加が目立った。
英国、カナダ、オーストラリアでの解析でも、同様の結果が得られた。
なお著者は、自動車については解析していないこと、臨床上の詳細、天気や月の可視性などは不明であったことなどを研究の限界として挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)