心臓手術中の左心耳閉鎖、脳卒中リスクを減らせるか/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2018/06/05

 

 心臓手術を受ける患者において、左心耳閉鎖(left atrial appendage occlusion:LAAO)の併施群は非併施群と比較して、その後の脳卒中および全死因死亡リスクが有意に低いことが、米国・メイヨー・クリニックのXiaoxi Yao氏らによる後ろ向きコホート研究の結果、明らかにされた。LAAOは、心臓手術中に行われる可能性があるが、長期的な脳卒中リスクとの関連に関するデータはほとんど存在せず、一方で術後の心房細動(AF)との関連を示唆するエビデンスが示されていた。今回の結果を受けて著者は、「無作為化試験を含む検討を行い、外科的LAAOの役割を明確にする必要がある」と述べている。JAMA誌2018年5月22日号掲載の報告より。

後ろ向きコホート研究で、LAAO併施群と非併施群を比較、AF既往有無別評価も
 研究グループは、米国大規模データを用いた後ろ向きコホート研究で、心臓手術中に行うLAAOと脳卒中、死亡および術後のAF発症リスクとの関連を評価した。

 2009年1月1日~2017年3月30日の間に、冠動脈バイパス術(CABG)または弁手術を受けた、民間保険またはメディケアに加入する18歳以上について、2017年3月31日まで追跡した。

 対象患者について1対1の傾向スコアマッチングを用いて76のベースライン特性で均等化し、LAAO併施群と非併施群を比較した。AF既往の有無別の層別化も行った。

 主要評価項目は、脳卒中(虚血性脳卒中または、全身性塞栓症など)と全死因死亡とした。副次評価項目は、術後AF(既往のない患者の術後30日以内の発症)、長期のAF関連受診(外来および入院のイベント率)であった。

非AF既往患者では有意差はみられず、術後AF増大
 対象期間中に心臓手術を受けたのは7万5,782例で、平均年齢は66.0歳(SD 11.2)、女性が2万2,091例(29.2%)、AF既往患者は2万5,721例(33.9%)で、LAAO併施を受けたのは4,374例(5.8%)、平均追跡期間は2.1年(SD 1.9)であった。

 傾向スコアをマッチングさせた8,590例において、LAAO併施は、脳卒中リスクの有意な低下(1.14 vs 1.59件/100人年、ハザード比[HR]:0.73[95%信頼区間[CI]:0.56~0.96、p=0.03]、死亡の有意な低下(3.01 vs.4.30、0.71[95%CI:0.60~0.84]、p<0.001)と、それぞれ関連することが示された。

 一方で、LAAO併施群はAF関連の外来受診率が有意に高く(11.96 vs.10.26件/人年、絶対差:1.70件/人年[95%CI:1.60~1.80]、率比:1.17[95%CI:1.10~1.24]、p<0.001)、入院率も高かった(0.36 vs.0.32、0.04[0.02~0.06]、1.13[1.05~1.21]、p=0.002)。

 AF既往患者(6,438/8,590例[74.9%])における比較(LAAO併施群 vs.非併施群)では、脳卒中リスクは1.11 vs.1.71件/100人年(HR:0.68[95%CI:0.50~0.92]、p=0.01)、全死因死亡リスクは3.22 vs.4.93件/100人年(HR:0.67[95%CI:0.56~0.80]、p<0.001)で、それぞれ有意差がみられた。

 一方、AF非既往患者(2,152/8,590例[25.1%])における比較(LAAO併施群 vs.非併施群)では、脳卒中リスクは1.23 vs.1.26件/100人年(HR:0.95[95%CI:0.54~1.68]、p=0.87)、全死因死亡リスクは2.30 vs.2.49件/100人年(HR:0.92[95%CI:0.61~1.37]、p=0.67)で、それぞれ有意差はみられなかった。しかし、術後AFリスクについて、イベント発生率(100人年当たり)は27.7% vs.20.2%でLAAO併施群が有意に多かった(HR:1.46[95%CI:1.22~1.73]、p<0.001)。

 AFとLAAOの相互作用の有意性は認められなかった(脳卒中のp=0.29、死亡のp=0.16)。

(ケアネット)

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コメンテーター : 香坂 俊( こうさか しゅん ) 氏

慶應義塾大学 循環器内科 准教授

J-CLEAR評議員

コメンテーター : 今中 和人( いまなか かずひと ) 氏

医療法人朗源会 大隈病院

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