英国において、女性に対する腹部大動脈瘤(AAA)スクリーニングプログラムは、男性と同様のデザインでは、費用対効果が得られそうもないという。英国・ケンブリッジ大学のMichael J. Sweeting氏らによる解析結果で、Lancet誌オンライン版2018年7月26日号で発表された。英国においてAAA死亡に占める女性の割合は3分の1。男性については、国家的スクリーニングプログラムで死亡が減少し、費用対効果が認められているが、女性に同様のプログラムを提供した場合の有益性、有害性、および費用対効果については、公式な評価は行われていなかった。
スクリーニングの増分費用対効果比などを検証
研究グループは、女性へのAAAスクリーニングの臨床的有益性、有害性、費用対効果を解析するために、決定モデルを開発し、女性集団(AAAスクリーニング参加群vs.非参加群)のあらかじめ定義されたアウトカムとして、AAA起因の死亡、生存年、質調整生存年、コスト、増分費用対効果比を評価した。
AAAスクリーニング、サーベイランス、介入について個別のイベントシミュレーションモデルも設定。女性特有の関連パラメータを、系統的な論文レビュー、ナショナルレジストリ、公的データベース、主要なAAA手術試験、英国国民保健サービス(NHS:National Health Service)の参照コストなどから入手し検討した。
実施年齢、判定指標などの適切なオプション開発が必要
英国女性に対するAAAスクリーニングは現在、英国男性に提供されているもの(65歳時、大動脈径≧3.0cmでAAAと診断、≧5.5cmで待機的手術を検討)と同様であり、30年以上実施されている。その推定増分費用対効果比は、3万ポンド(95%信頼区間[CI]:1万2,000~8万7,000)/質調整生存年獲得であった。スクリーニング参加者3,900人につきAAA関連死1例を予防可能であり、過剰診断の割合は33%と推算された。
女性のための修正オプション(70歳時にスクリーニング、AAA診断は大動脈径2.5cm、手術検討は同5.0cmとする)では、推定増分費用対効果比は、2万3,000ポンド(9,500~7万1,000)/質調整生存年獲得で、AAA関連死1例の予防に必要なスクリーニング参加者は1,800人であったが、過剰診断の割合は55%と推算された。
AAA有病率についての不確かさ、異なる年齢での女性の大動脈径分布、スクリーニングのQOLへの効果などが大きく影響して、費用対効果比にはかなりの不確実性があった。
これらを踏まえて著者は、「女性における大動脈径分布、スクリーニングに関連したQOL低下の可能性についてさらなる研究を行い、修正オプションの完全な有益性と有害性を評価する必要がある」とまとめている。
(ケアネット)