院外心停止の最適な気道管理法は確立されていないという。英国・University of the West of EnglandのJonathan R. Benger氏らAIRWAYS-2試験の研究グループは、院外心停止患者への声門上気道デバイス(SGA)による管理は、気管挿管(TI)と比較して、30日時の機能的アウトカムを改善しないことを示し、JAMA誌2018年8月28日号で報告した。SGAの挿入手技は、TIよりも簡便で迅速に施行可能であり、習熟に要する訓練も少ないため、継続的に臨床で用いられている。観察研究では、TIのほうが延命効果に優れる可能性が示唆されているが、院外心停止の気道管理の最適なアプローチを同定するために、大規模な無作為化試験の実施が求められていた。
mRSスコアをクラスター無作為化試験で評価
本研究は、非外傷性の院外心停止成人患者の初期高度気道管理戦略における、SGAのTIに対する優位性を検証する多施設共同クラスター無作為化試験であり、イングランドの4つの大規模な救急医療サービス(EMS)が参加した(英国国立健康研究所[NIHR]医療技術評価プログラムの助成による)。
対象は、年齢18歳以上、非外傷性の院外心停止を発症し、最初あるいは2番目に現場に到着した救急隊員による治療を受け、EMSの医療者により蘇生術が開始または継続された患者であった。救急隊員は、初期の高度気道管理戦略として、SGAまたはTIを行う群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。
主要アウトカムは、退院時または院外心停止後30日時のいずれか早い時期の修正Rankinスケール(mRS)のスコアとした。mRSは、0~3点を良好なアウトカム、4~6点(6点は死亡)を不良なアウトカムとした。副次アウトカムには、換気成功、胃内容物の逆流、誤嚥などが含まれた。
初期換気成功率は優れる、逆流、誤嚥に差はない
2015年6月~2017年8月の期間に、1,523人の救急隊員(SGA群:759人、TI群:764人)と、9,296例の院外心停止患者(SGA群:4,886例、TI群:4,410例)が登録された。患者は95の施設に搬送された。フォローアップは2018年2月に終了した。
全体の年齢中央値は73歳、女性が36.3%含まれた。mRSスコアのデータは9,289例で得られた。
退院時または30日時の良好なアウトカム(mRSスコア:0~3点)の割合は、SGA群が6.4%(311/4,882例)であり、TI群の6.8%(300/4,407例)と比較して有意な差は認めなかった(補正後リスク差[RD]:-0.6%、95%信頼区間[CI]:-1.6~0.4、p=0.24)。死亡率はそれぞれ91.9%、91.5%だった。
初期換気の成功率は、SGA群が87.4%(4,255/4,868例)と、TI群の79.0%(3,473/4,397例)に比べ有意に良好であった(補正後RD:8.3%、95%CI:6.3~10.2)。ただし、割り付けられた高度気道管理を受けた患者の割合は、SGA群が85.2%(4,161/4,883例)であったのに対し、TI群は77.6%(3,419/4,404例)と少なかった。
逆流の割合は、SGA群が26.1%(1,268/4,865例)、TI群は24.5%(1,072/4,372例)(補正後RD:1.4%、95%CI:-0.6~3.4)、誤嚥の割合はそれぞれ15.1%(729/4,824例)、14.9%(647/4,337例)(0.1%、-1.5~1.8)であり、いずれも両群間に有意差はみられなかった。
著者は、「院外心停止成人患者における個々の高度気道管理技術の正確な役割は、依然として明らかではない」としている。
(医学ライター 菅野 守)