米国のプライマリケアに従事する総合診療医(general practitioner:GP)の「患者との共同意思決定(shared decision making:SDM)や、予防的ケアをする時間がない」という主張について、米国・ミシガン大学のTanner J. Caverly氏らがマイクロシミュレーション試験で調べた結果、これまで広く持たれてきた疑念「GPは貴重な時間を“個人的なケア”の活動に費やしている」ことが確認されたという。著者は、「ひとたび個人的な時間が膨大であることを知らしめれば、プライマリケアの権威者は、増大している臨床的要求に、より多くの個人的な時間を再割当するようGPを“説得する”ための方法を、試しはじめることができるだろう」と述べている。BMJ誌2018年12月13日号(クリスマス特集号)掲載の報告。
予防的介入のSDMに必要な時間を算出
マイクロシミュレーション試験はモンテカルロ法を用いて、米国のプライマリケアを対象に行われた。米国国民健康栄養調査(NHANES)から抽出した、米国での年間の仕事時間と患者パネルサイズ(2,000例)を代表するGP 1,000例をサンプルとした。
主要評価項目は、予防的ケアに利用できる時間に関して、高度に推奨されている予防的介入のためのSDMに必要な時間、prevention-time-space-deficit(すなわち、医師が足りないと言っている分のtime-space)であった。
現状で費やしている時間は1日29分に対し、必要としている時間は6.1時間
平均して、GPが予防的ケアサービスについて患者と話し合うために費やしていた時間は、平日1日につき29分(受診者1人につきちょうど2分)であった。一方で、GPが予防的ケアに関するSDMを完璧にこなすのに必要としている時間は、6.1時間であった。
たとえSDMのために必要な時間がコンサバティブ(すなわち、ばかばかしいほど希望的)な時間であっても、試験サンプルであるGPの全員がprevention-time-space-deficit(平均5.6時間/日の不足)を経験していた。しかしながら、平日にGPが利用していない時間には、仕事に再割当できる、身だしなみやセルフケア、レジャー、不要な睡眠などといった個人的な時間が含まれていた。このことから時間不足は、個人的な時間を減らし、その分を仕事にシフトすれば容易に克服可能であった。たとえば、バスルームでの休憩の頻度を1日おきにする、年長の子供と一緒にいる時間を省略する(どのみちそれほど一緒にいることが好きではないだろうから)などで可能だろう。
(ケアネット)