発症後6時間以内の急性ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、直接的経皮的冠動脈インターベンション(PCI)中の補助的な低用量アルテプラーゼ冠動脈内投与は、微小血管閉塞量を低下しないことが示された。英国・グラスゴー大学のPeter J. McCartney氏らが440例の患者を対象に行ったプラセボ対照無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2019年1月1・8日号で発表された。微小血管閉塞は概して、急性STEMI患者に影響を及ぼし、有害転帰と関連することが知られる。著者は「試験の結果は、このような治療法を支持しないものだった」とまとめている。
アルテプラーゼを、再灌流直後・ステント留置前に冠動脈内投与
研究グループは2016年3月~2017年12月にかけて、主冠動脈の近位-中間部血管閉塞によるSTEMI発症後6時間以内に、英国内11ヵ所の病院を受診した患者440例を対象に試験を行った。
被験者を無作為に3群に分け、アルテプラーゼ10mg(144例)、アルテプラーゼ20mg(145例)、プラセボ(151例)を、直接的PCI中の早期、梗塞関連冠動脈の再灌流直後でステント留置前に、それぞれ冠動脈内に注入した。
主要アウトカムは、試験開始後2~7日にコントラスト強調心臓MRIで評価した微小血管閉塞量(左室心筋重量%)だった。
微小血管閉塞量、アルテプラーゼ両群ともにプラセボ群と同等
事前に規定した無益性分析の基準から、中間解析時における条件付き検出力が、両用量のアルテプラーゼ群ともに30%未満だったため、被験者募集は当初予定よりも早く2017年12月21日に中止となった。
無作為化を受けた被験者440例は、平均年齢60.5歳、女性は15%だった。主要アウトカムの評価ができたのは396例(90%)、フォローアップ中に試験を中止したのは17例(3.9%)で、それ以外の全例は3ヵ月間のフォローアップを完了した。
主要解析において、微小血管閉塞の平均量は、アルテプラーゼ20mg群3.5%、プラセボ群2.3%だった(推定群間差:1.16%、95%信頼区間[CI]:-0.08~2.41、p=0.32)。また、アルテプラーゼ10mg群は2.6%だった(対プラセボの推定群間差:0.29%、95%CI:-0.76~1.35、p=0.74)。
なお、重大有害心イベント(心臓死、非致死的MI、予定外の心不全入院)の発生率は、プラセボ群が15例(10.1%)、アルテプラーゼ10mg群が18例(12.9%)、アルテプラーゼ20mg群が12例(8.2%)だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)