冠動脈疾患のリスク因子を有する安定狭心症患者における冠動脈血行再建の適応の判定法として、心筋灌流心血管磁気共鳴画像(MRI)は冠血流予備量比(FFR)と比較して血行再建の施行率が低く、1年後の主要有害心イベント(MACE)に関して心血管MRIはFFRに対し非劣性であることが、ドイツ・フランクフルト大学病院のEike Nagel氏らが実施した「MR-INFORM試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2019年6月20日号に掲載された。安定狭心症患者では、血行再建の適応の判定にこれら2つの戦略が用いられることが多いが、MACEとの関連におけるこれらの非劣性は確立されていないという。
4ヵ国16施設が参加した非劣性試験で心血管MRI群とFFR群に割り付け
MR-INFORM試験は、英国、ポルトガル、ドイツ、オーストラリアの16施設が参加した非盲検多施設共同相対的有効性非劣性試験であり、2010年12月~2015年8月の期間に患者登録が行われた(英国国立衛生研究所Guy's and St. Thomas生物医学研究センターなどの助成による)。
対象は、定型的狭心症を有し、心血管リスク因子を2つ以上有するか、またはトレッドミル運動負荷試験が陽性の患者であった。被験者は、心血管MRIに基づく戦略またはFFRに基づく戦略(侵襲的冠動脈造影とFFR測定)を行う群に無作為に割り付けられた。
血行再建は、心血管MRI群では心筋の6%以上が虚血の場合、FFR群ではFFRが0.8以下の場合に推奨された。
主要複合アウトカムは、1年以内のMACE(死亡、非致死的心筋梗塞、標的血管の血行再建)であった。非劣性マージンは、リスク差6ポイントとした。
血行再建を受けた患者の割合:心血管MRI群35.7% vs. FFR群45.0%
918例が登録され、心血管MRI群に454例(平均年齢62±10歳、男性72.5%)、FFR群には464例(62±9歳、72.2%)が割り付けられた。
血行再建を推奨する基準を満たしたのは、心血管MRI群が40.5%(184/454例)、FFR群は45.9%(213/464例)であった(p=0.11)。指標となる血行再建を受けた患者の割合は、心血管MRI群がFFR群よりも低かった(35.7%[162例]vs.45.0%[209例]、p=0.005)。
主要複合アウトカムの発生率は、心血管MRI群が3.6%(15/421例)、FFR群は3.7%(16/430例)であり(リスク差:-0.2ポイント、95%信頼区間[CI]:-2.7~2.4)、非劣性の閾値を満たした。無MACE生存(HR:0.96、95%CI:0.47~1.94、p=0.91)は両群間に差はなかった。
全死因死亡(HR:2.05、95%CI:0.38~11.21)、心臓死(1.03、0.15~7.29)、非致死的心筋梗塞(0.84、0.35~2.02)、標的血管の血行再建(0.34、0.09~1.26)には、心血管MRI群とFFR群の間に有意な差はみられなかった。
また、12ヵ月時に、狭心症の発作を認めなかった患者の割合にも、両群間で有意な差はなかった(心血管MRI群49.2% vs.FFR群43.8%、p=0.21)。
重篤な有害事象の発現は、心血管MRI群とFFR群でほぼ同等だった。
著者は、「検査前に予測された冠動脈疾患の確率は75%であるが、侵襲的冠動脈造影の施行率はFFR群が96.8%であったのに対し、心血管MRI群は48.2%だった」とし、「冠動脈疾患疑い例のマネジメントに関する現行のNICEガイドラインでは、診断戦略と治療戦略を合わせた方法のエビデンスがないため、これらは別個に扱われているが、本試験の知見はこの知識の乖離を埋めるものである」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)