妊娠性肝内胆汁うっ滞症の妊婦をウルソデオキシコール酸で治療しても、周産期の有害転帰は低下しないことから、ウルソデオキシコール酸の常用は再考されるべきである。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのLucy C. Chappell氏らが、イングランドとウェールズの33施設で妊娠性肝内胆汁うっ滞症の妊婦を対象に実施した多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(PITCHES)の結果を報告した。妊婦の皮膚掻痒と血清胆汁酸濃度の上昇で特徴づけられる妊娠性肝内胆汁うっ滞症は、死産、早産、新生児治療室への入室の増加と関連がある。ウルソデオキシコール酸はこの治療に広く使用されているが、先行研究では症例数が限られており統計学的な有意差もなく、エビデンスは不十分であった。Lancet誌オンライン版2019年8月1日号掲載の報告。
ウルソデオキシコール酸群vs.プラセボ群を検討
研究グループは、18歳以上、妊娠週数20週~40週6日の単胎または双胎の妊婦で、致死的胎児異常がない妊娠性肝内胆汁うっ滞症患者を、ウルソデオキシコール酸群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、ウルソデオキシコール酸500mg錠を1日2錠投与した。投与量は、1日最低1錠、最大4錠の範囲で担当医師の裁量により増減可とし、登録時から出産まで治療を継続した。
主要評価項目は、周産期死亡(無作為化後の子宮内胎児死亡または生後7日以内の新生児死亡)、早産(妊娠週数37週未満)、4時間以上の新生児治療室入室(出産から退院まで)の複合エンドポイント(新生児は複数該当時も1例としてカウント)とし、intention-to-treat解析を行った。
ウルソデオキシコール酸群とプラセボ群で周産期の有害転帰に有意差なし
2015年12月23日~2018年8月7日に605例が登録され、ウルソデオキシコール酸群305例、プラセボ群300例に無作為に割り付けられた。主要評価項目の解析対象は、ウルソデオキシコール酸群が妊婦304例および新生児322例(妊婦1例と新生児2例についてはデータ使用の同意が撤回された)、プラセボ群がそれぞれ300例および318例であった。
複合エンドポイントのイベントは、ウルソデオキシコール酸群で新生児322例中74例(23%)、プラセボ群で新生児318例中85例(27%)に発生した(補正リスク比0.85、95%信頼区間[CI]:0.62~1.15)。重篤な有害事象は、ウルソデオキシコール酸群で2例、プラセボ群で6例報告され、治療に関連する重篤な有害事象は確認されなかった。
著者は、プラセボ群におけるイベント発生率が予想よりも低かったこと、症例数が少なく検出力が不足していたことなどを研究の限界として挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)