治療抵抗性の逆流関連の胸やけ、手術が薬物よりも有効/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2019/10/30

 

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)抵抗性の胸やけで紹介された患者のうち、全身の精密検査によって、真にPPI抵抗性で胃食道逆流に関連する胸やけが判明した患者は少数であったが、このきわめて選択性の高い患者の治療では、腹腔鏡下Nissen噴門形成術が薬物療法よりも優越性を示したとの報告が、米国・ベイラー大学医療センターのStuart J. Spechler氏らによって発表された。研究の成果は、NEJM誌2019年10月17日号に掲載された。PPIによる治療を行っても持続する胸やけは、頻度の高い臨床的問題であり、考えられる複数の原因が存在する。一方、PPI抵抗性の胸やけの治療は有効性が証明されておらず、逆流を抑制する薬剤(例:バクロフェン)や逆流防止手術による胃食道逆流のコントロール、または神経修飾薬(例:デシプラミン)による内臓の過敏性の抑制に重点が置かれているという。

GERD-HRQLの改善を3群で比較する無作為化試験
 研究グループは、全身の精密検査で胃食道逆流症(GERD)以外の疾患と機能障害を除外し、食道内の多チャンネル管腔内インピーダンス(MII)-pHモニタリングで逆流関連と判明した患者の治療では、逆流防止手術が薬物療法よりも有効性が優れるとの仮説を立て、これを検証する目的で無作為化試験を実施した(米国退役軍人省共同研究プログラムの助成による)。

 PPI抵抗性の胸やけで、米国退役軍人省の消化器クリニックを紹介された患者が、オメプラゾール(20mg、1日2回、2週間)の投与を受けた。このうち胸やけが持続する患者について、内視鏡検査、食道生検、食道内圧測定、食道内MII-pHモニタリングを実施。検査により逆流関連の胸やけと判明した患者が、外科治療(腹腔鏡下Nissen噴門形成術)を受ける群、実薬(オメプラゾール+バクロフェン、症状に応じてデシプラミン追加)投与を受ける群、対照薬(オメプラゾール+プラセボ)投与を受ける群に無作為に割り付けられた。

 主要アウトカムは治療成功とし、1年後におけるGERD-健康関連QOLスコア(GERD-HRQL、0~50点、点数が高いほど症状が重度)の50%以上の改善(低下)と定義された。

366例中288例が除外、治療成功率:67% vs.28% vs.12%
 2012年8月29日~2015年12月2日の期間に366例(平均年齢48.5±12.2歳、男性280例)が登録され、無作為化前の検査により288例が除外された。
 除外例の内訳は、2週間のオメプラゾール投与中に胸やけが改善(42例)、試験手順を完了せず(70例)、その他の理由(54例)、GERD以外の食道疾患(23例)、機能性胸やけ(PPI投与中のMII-pHモニタリングで食道内酸曝露が正常、症状関連確率[SAP]≦95%[逆流エピソードと胸やけに有意な関連がないことを示す])の患者(99例)であった。

 残りの78例(平均年齢45.4±11.8歳、男性64例)が無作為化された。外科治療群が27例、実薬群が25例、対照薬群は26例であった。また、MII-pHモニタリングでSAP>95%(逆流性過敏)のみの患者が37例、異常な酸逆流のみの患者が15例、両者に該当する患者は25例だった(1例でデータが欠落)。

 1年後の治療成功率は、外科治療群が67%(18/27例)と、実薬群の28%(7/25例、p=0.007)および対照薬群の12%(3/26例、p<0.001)に比べ、いずれも有意に優れた。実薬群と対照薬群との差は16ポイント(95%信頼区間[CI]:-5~38、p=0.17)だった。

 外科治療群のうち、逆流性過敏(SAP>95%、14例)の患者の治療成功率は71%、異常な酸逆流(酸逆流のみの患者と、酸逆流+SAP>95%の患者、13例)の患者の治療成功率は62%であった。

 重篤な有害事象は、外科治療群が4例で5件、実薬群が4例で4件、対照薬群は3例で5件認められた。

 著者は、「食道内MII-pHモニタリングを含む全身の精密検査は、逆流防止手術が奏効する可能性のある逆流性過敏を含むPPI抵抗性胸やけの患者サブグループを同定可能である」と結論している。

(医学ライター 菅野 守)

専門家はこう見る

コメンテーター : 上村 直実( うえむら なおみ ) 氏

国立国際医療研究センター国府台病院 名誉院長

東京医科大学 消化器内視鏡学講座 兼任教授

J-CLEAR評議員