欧州のICUにおける終末期(エンドオブライフ)の方針決定について、16年前の調査時と比べて、延命治療の制限が有意に増大しており、延命治療の制限を受けなかった死亡は有意に減少していたことが判明した。イスラエル・ヘブライ大学のCharles L. Sprung氏らが、1999~2000年に行ったICUにおける終末期医療に関する研究「Ethicus-1」対象の欧州22ヵ所のICUについて、2015~16年に前向き観察研究「Ethicus-2」を行い明らかにし、JAMA誌オンライン版2019年10月2日号で発表した。ICUにおける終末期の方針決定は世界中で日々起きているが、ここ10年間で欧州での終末期医療に関する考え方、法律、勧告・ガイドラインに変化が生じており、ICUでの方針決定が変化している可能性が示唆されていた。
1999~2000年調査対象施設を2015~16年に調査し比較
Ethicus-2研究は、1999年1月~2000年7月に行ったEthicus-1研究で対象とした欧州ICUの22ヵ所を対象に行われた。2015年9月~2016年10月の、継続する6ヵ月の期間中に、各ICUで死亡または延命治療の制限を行った患者について調べた。
患者を死亡まで、または初回の延命治療制限に関する決定から2ヵ月後まで追跡し、終末期アウトカムを(1)心肺蘇生(CPR)を含む延命治療を開始しない、(2)延命治療を中断、(3)死亡までの経過を積極的に短縮、(4)CPR失敗、(5)脳死の5つの相互排他的カテゴリーに分類。アウトカムはシニア集中治療専門医によって確定された。
主要アウトカムは、患者が(1)~(3)の治療制限を受けたかどうかで、Ethicus-1研究とEthicus-2研究の結果を比較し、その変化を検証した。
延命治療を開始しないが50%に、中断も38.8%に増加
Ethicus-2研究では、対象期間中にICUに入室した1万3,625例のうち、死亡または延命治療の制限を行った1,785例(13.1%)を解析に包含した。Ethicus-1研究の被験者(2,807例)の年齢中央値は67歳(IQR:54~75)に対し、Ethicus-2研究の被験者の年齢中央値は70歳(59~79)で有意差があった(p<0.001)。女性の割合は、それぞれ38.7%、39.6%で類似していた(p=0.58)。
延命治療の制限を受けた患者は、Ethicus-1研究1,918例(68.3%)に対し、Ethicus-2研究は1,601例(89.7%)と有意に増大していた(群間差:21.4%、95%信頼区間[CI]:19.2~23.6、p<0.001)。「延命治療を開始しない」を選択した患者は、Ethicus-1試験1,143例(40.7%)に対し、Ethicus-2試験は892例(50%)と有意に増大しており(群間差:9.3%、95%CI:6.4~12.3、p<0.001)、「延命治療を中断」を選択した患者の割合も、それぞれ695例(24.8%)、692例(38.8%)と有意に増大していた(群間差:14.0%、95%CI:11.2~16.8、p<0.001)。
一方で、「CPRの失敗」はEthicus-1研究628例(22.4%)に対し、Ethicus-2研究は110例(6.2%)と有意に減少し(群間差:-16.2%、95%CI:-18.1~-14.3、p<0.001)、「脳死」もそれぞれ261例(9.3%)、74例(4.1%)と有意に減少した(群間差:-5.2%、95%CI:-6.6~-3.8、p<0.001)。また、「死亡までの経過を積極的に短縮」もそれぞれ80例(2.9%)、17例(1.0%)と有意に減少した(群間差:-1.9%、95%CI:-2.7~-1.1、p<0.001)。
研究グループは試験の結果を踏まえて、欧州のICUにおける終末期医療の実態には経年的変化が認められるとしながら、ICU入室中に治療制限を受けなかったが容態が改善して生存退院した患者を除外しており、示された所見については限定的だと述べている。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)