三尖弁逆流へのTriClipの有用性/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2019/11/22

 

 三尖弁逆流を軽減する低侵襲の経カテーテル三尖弁修復システム(TriClip)は、その重症度を少なくとも1段階軽減するのに安全かつ有効であることが示唆され、その軽減の程度は、術後6ヵ月時点での有意な臨床的改善に相当する可能性があるという。ドイツ・University Hospital BonnのGeorg Nickenig氏らが、欧州および米国の21施設で実施した多施設共同前向き単群臨床試験「TRILUMINATE試験」の結果を報告した。三尖弁逆流症は、合併率および死亡率の高さと関連する広く一般的にみられる疾患だが、治療の選択肢はほとんどないとされている。Lancet誌オンライン版2019年11月7日号掲載の報告。

三尖弁逆流の重症度を5段階に分類し有効性を評価
 TRILUMINATE試験の対象は、NYHA心機能分類II以上で、適切な標準治療を受けた中等度以上の三尖弁逆流を有する患者で、TriClip三尖弁修復システムによるedge-to-edge法を用いて治療を受けた。収縮期肺動脈圧60mmHg以上、三尖弁処置歴を有する患者、およびTriClip留置を妨げる可能性がある心血管電子機器が植え込まれている患者は除外した。三尖弁逆流の重症度は、標準的な米国心エコー図学会(ASE)の分類を拡張した5段階(mild、moderate、severe、massive、torrential)で分類した。

 有効性の主要評価項目は、三尖弁逆流重症度が術後30日時点で1段階以上改善した患者の割合で、達成目標は35%とした。有効性の解析対象は、大腿静脈穿刺による三尖弁修復術を試みた全患者であった。

 安全性の主要評価項目は、6ヵ月時点における主要有害事象で、発現率は39%未満とした(複合エンドポイント)。なお、追跡調査期間が6ヵ月を満たさず、かつ追跡中に主要有害事象が発現しなかった患者は、安全性解析対象から除外した。

 本試験の登録は完了し、現在、追跡調査が進行中である。

術後30日時点で1段階以上改善した患者の割合は86%
 2017年8月1日~2018年11月29日に85例(平均[±SD]年齢77.8±7.9歳、女性56例[66%])が登録され、成功裏にTriClip留置を受けた。

 心エコーのデータおよび画像が利用可能であった83例において、三尖弁逆流の重症度が術後30日時点で1段階以上改善した患者は71例、86%であった。片側97.5%信頼区間の下限値は76%であり、事前に定義した達成目標の35%を上回った(p<0.0001)。

 安全性解析対象は84例で、6ヵ月時点において主要有害事象が認められた患者は3例(4%)であり、事前に定義した39%未満を満たした(p<0.0001)。一弁尖のみの把持は、72例中5例(7%)に発現した。術中の死亡、術式変更、デバイス塞栓、心筋梗塞、脳卒中は発生しなかった。6ヵ月時点で全死因死亡は84例中4例(5%)に確認された。

 なお著者は本研究の限界として、無作為化試験ではなく、合併率と死亡率の低下との関連性は不明であることを挙げ、「今後は、患者の長期アウトカムに関する三尖弁逆流の軽減の有効性を評価する無作為化試験が必要である」とまとめている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

専門家はこう見る

コメンテーター : 上妻 謙( こうづま けん ) 氏

帝京大学医学部内科学講座・循環器内科 教授