院外救急医療の気管挿管時において、ロクロニウムの使用はsuccinylcholine(本邦ではスキサメトニウム)に対し、初回成功率に関して非劣性を示さなかった。フランス・CHU de la Reunion病院のBertrand Guihard氏らが1,248例を対象に行った無作為化試験で明らかにした。ロクロニウムおよびsuccinylcholineは迅速導入気管挿管時にしばしば使用されるが、これら薬剤の救急医療での気管挿管成功に関する有効性の比較について臨床試験による評価はされておらず、またsuccinylcholine使用では、ロクロニウム使用では報告されていない有害事象との関連が示されていた。JAMA誌2019年12月17日号掲載の報告。
非劣性マージン7%とし、プロトコール適合解析
研究グループは2014年1月~2016年8月にかけて、フランス17ヵ所の院外救急医療ユニットを通じて、院外での迅速導入気管挿管を要する成人患者1,248例を対象に試験を行った。
被験者を無作為に2群に分け、一方にはロクロニウム(1.2mg/kg、624例)を、もう一方にはsuccinylcholine(1mg/kg、624例)を投与し、ロクロニウムのsuccinylcholineに対する非劣性を検証した。追跡は、2016年8月31日まで行った。
主要アウトカムは、初回施行での気管挿管成功率。非劣性マージンは7%とし、主要解析はper-protocolで行うと事前に規定した。
初回挿管成功率、succinylcholine群79.4%に対しロクロニウム群74.6%
被験者の平均年齢は56歳、女性は501例(40.1%)だった。1,230例(98.6%)が試験を完了し、うち1,226例(98.2%)がper-protocol解析に包含された。
初回施行での気管挿管成功は、ロクロニウム群455/610例(74.6%)、succinylcholine群489/616例(79.4%)だった。群間差は、-4.8%(片側97.5%信頼区間[CI]:-9~∞)で、非劣性の基準は満たされなかった。
最も多くみられた気管挿管に関する有害事象は、低酸素血症と低血圧症で、ロクロニウム群ではそれぞれ55/610例(9.0%)と39/610例(6.4%)、succinylcholine群では61/616例(9.9%)と62/616例(10.1%)だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)