重症患者、気管挿管時のバッグマスク換気は有益か/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2019/02/28

 

 重症成人患者の気管挿管時におけるバッグマスクを用いた陽圧換気(バッグマスク換気)の実施は、未実施の患者と比べて、酸素飽和度を上昇し高度低酸素血症の発生リスクを有意に低下することが示された。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのJonathan D. Casey氏らが、401例の患者を対象に行った多施設共同無作為化比較試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年2月18日号で発表した。気管挿管中の重症成人患者における低酸素血症は最も頻度の高い合併症であり、心停止および死亡のリスクを高める可能性がある。バッグマスク換気の実施が、誤嚥リスクを増大することなく低酸素血症の予防に有効かどうかについては明らかになっていなかった。

米国7ヵ所のICUで401例を対象に試験
 研究グループは2017年3月15日~2018年5月6日に、米国内7ヵ所の集中治療室(ICU)を通じて、気管挿管を受ける重症患者401例を対象に試験を行った。

 被験者を無作為に2群に分け、導入から喉頭鏡検査までの間に、一方にはバッグマスク換気を行い(バッグマスク群)、もう一方には換気を行わなかった(対照群)。

 主要アウトカムは、導入から気管挿管後2分間に観察された最低酸素飽和度。副次アウトカムは、酸素飽和度80%未満低下と定義した高度低酸素血症の発生率とした。

高度低酸素血症発生率、バッグマスク群11%、対照群23%
 登録被験者401例において、最低酸素飽和度の中央値は、バッグマスク群96%(四分位範囲:87~99)、対照群93%(同:81~99)だった(p=0.01)。

 高度低酸素血症の発生率は、バッグマスク群21例(10.9%)、対照群45例(22.8%)だった(相対リスク:0.48、95%信頼区間[CI]:0.30~0.77)。

 施術者の報告による挿管中に認められた誤嚥は、バッグマスク群2.5%、対照群4.0%だった(p=0.41)。気管挿管後48時間の胸部X線で認めた新たな陰影の発生率は、それぞれ16.4%、14.8%だった(p=0.73)。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 野間 重孝( のま しげたか ) 氏

栃木県済生会宇都宮病院 副院長

J-CLEAR評議員