臨床論文、男性はポジティブに書く傾向/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2020/01/09

 

 医療やライフサイエンス部門における女性の活躍がいまだ目立たないのは、臨床研究の自己表現力(self presentation)において性差が存在しているせいではないのか。ドイツ・マンハイム大学のMarc J. Lerchenmueller氏らが、臨床試験論文約10万件、一般生命科学論文約620万件を対象に調査した結果、臨床試験論文で筆頭および末尾の著者のいずれか、もしくは両方が男性の場合、いずれも女性の場合に比べてタイトルやアブストラクト内に、「novel」や「excellent」といった用語を用いて研究結果を肯定的に発表する傾向が強いことが判明したという。とくにその傾向は、影響力が強い臨床ジャーナルで最も大きく、さらにそうした肯定的表現が、論文の引用率の高さとも関連していたという。BMJ誌2019年12月16日号クリスマス特集号の「Sweet Little Lies」より。

「novel」「excellent」など25の肯定表現の使用を調査
 研究グループは、2002~17年に発表されPubMedに登録された臨床試験論文10万1,720件と、一般生命科学論文約620万件について、そのタイトルとアブストラクトを後ろ向き観察研究にて調べた。

 タイトルおよびアブストラクトを解析して、「novel」(新奇な)、「excellent」(卓越した、素晴らしい)といった用語を用いて研究結果を肯定的にみせる違いが男女間に存在するかどうかを検証。科学ジャーナル、刊行年、ジャーナルの影響力、科学分野で補正を行ったうえで、25の肯定的用語について、筆頭および末尾の著者の性機能としての「ポジティブ・フレーミング」の相対的蓋然性を推算・評価した。

ポジティブ・フレーミング、筆頭・末尾著者が女性では10.9%、男性では12.2%
 論文の筆頭・末尾の両著者が女性の場合、25の肯定的用語が1つでも用いられていたのは10.9%だったのに対し、一方もしくは両著者が男性の場合は12.2%で、相対格差は12.3%(95%信頼区間[CI]:5.7~18.9)だった。

 肯定的表現の性差は、影響力の強い臨床ジャーナル(Journal Citation Reportでインパクトファクター10超)で最も大きく、女性著者は男性著者に比べ、試験結果を肯定的に表現する傾向が21.4%低かった。

 すべての臨床ジャーナルにおいて、肯定的表現のある論文の引用率は9.4%(95%CI:6.6~12.2)と高く、影響力が強い臨床ジャーナルでは13.0%(同:9.5~16.5)だった。この結果は、PubMedに登録された一般生命科学論文に調査対象を広げた場合でも同様に認められ、肯定的な単語の使用の性差は、幅広いサンプルで一般化されることが示唆された。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 折笠 秀樹( おりがさ ひでき ) 氏

統計数理研究所 大学統計教員育成センター 特任教授

滋賀大学 データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター 特任教授

J-CLEAR評議員