腎デナベーション、降圧薬非投与の高血圧に有効/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2020/04/15

 

 降圧薬治療を受けていない高血圧患者の治療において、カテーテルを用いた腎神経焼灼術(腎デナベーション)は偽手術と比較して、優れた降圧効果をもたらし、安全性も良好であることが、ドイツ・ザールラント大学のMichael Bohm氏らの検討(SPYRAL HTN-OFF MED Pivotal試験)で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年3月29日号に掲載された。カテーテルを用いた腎デナベーションは、腎神経の焼灼を介して交感神経活性を抑制することで血圧を低下させる治療法。初期の概念実証研究では降圧効果が観察されているが、血圧がコントロールされていない患者を対象とした無作為化偽対照比較試験では、ベースラインに比べ有意な降圧効果を認めたものの、対照との間には差がなかったと報告されている。

3ヵ月後の収縮期血圧を比較する無作為化試験

 本研究は、日本を含む9ヵ国44施設が参加した単盲検無作為化偽対照比較試験であり、2015年6月~2019年10月の期間に患者登録が行われた(Medtronicの助成による)。

 対象は、年齢20~80歳、診察室収縮期血圧が150~<180mmHg、診察室拡張期血圧が≧90mmHgであり、自由行動下血圧測定で24時間の収縮期血圧の平均値が140~<170mmHgの高血圧患者であった。無作為化の前に、降圧薬の投与を受けていた患者は中止するよう求められた。被験者は、腎デナベーションまたは偽手術を受ける群(対照群)に無作為に割り付けられた。

 解析にはベイズ法による研究デザインを用い、今回の試験のデータ(251例)と以前の無作為化パイロット試験(80例)のデータを統合した。

 有効性の主要エンドポイントは、ベースラインから3ヵ月までの、ベースライン値で補正した24時間収縮期血圧の変化とした。有効性の副次エンドポイントは、同期間のベースライン値で補正した診察室収縮期血圧の変化であった。

頻度論的解析でも同様の結果

 解析の対象となった331例は、腎デナベーション群が166例(平均年齢52.4[SD 10.9]歳、女性36%)、対照群は165例(52.6[10.4]歳、32%)であった。

 ベースラインから3ヵ月後の24時間収縮期血圧の変化の差には、両群間に有意差が認められ、優越性の事後確率は0.999を超えており、群間差は-3.9mmHg(ベイズ95%確信区間[BCI]:-6.2~-1.6)であった。

 また、ベースラインから3ヵ月後の診察室収縮期血圧の変化の差にも、両群間に有意差がみられ、エンドポイントは満たされ(群間差:-6.5mmHg、95%BCI:-9.6~-3.5)、優越性の事後確率は0.999を上回った。

 一方、共分散分析(ANCOVA)で補正した頻度論的解析でも、血圧の変化はベイズ法の結果とほぼ同様であり、24時間収縮期血圧の変化の群間差は-4.0mmHg(95%信頼区間[CI]:-6.2~-1.8、p=0.0005)、診察室収縮期血圧の変化の群間差は-6.6mmHg(-9.6~-3.5、p<0.0001)であった。

 平均24時間血圧測定では、3ヵ月間で、腎デナベーション群は収縮期血圧が24時間を通じて一貫性をもって低下した。すなわち、夜間(22~7時)の平均収縮期血圧はベースラインの143(SD 10)mmHgから3ヵ月後には138(13)mmHgへ低下し(p<0.0001)、日中(7~22時)の平均収縮期血圧は156(9)mmHgから151(12)mmHgへと低下した(p<0.0001)。拡張期血圧についても同様の結果であった。一方、対照群では、このような血圧の有意な変化はみられなかった。

 3ヵ月間で、安全性関連の重大イベントが両群で1例ずつ発生したが(腎デナベーション群:高血圧クリーゼ/緊急症による入院、対照群:新規脳卒中)、デバイス関連および手技関連の重大なイベントは認められなかった。

 著者は、「本試験と対をなす進行中の試験(NCT02439749)では、降圧薬の投与を受けている患者における安全性と有効性を評価する予定である」としている。

(医学ライター 菅野 守)