ディスアナプシスは高齢者のCOPDリスクを増大/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2020/06/18

 

 気道サイズと肺胞の大きさが不均衡のディスアナプシスは、高齢者の慢性閉塞性肺疾患(COPD)と有意に関連しており、肺の大きさに比して下気道樹径が小さいほどCOPDのリスクが大きいことも示された。米国・コロンビア大学のBenjamin M. Smith氏らが、2件のコホート試験と1件のケースコントロール試験を基に、後ろ向きコホート試験を行い明らかにしたもので、結果を踏まえて著者は、「ディスアナプシスはCOPDのリスク因子と思われる」とまとめている。COPDの主要なリスクとして喫煙があるが、COPDリスクの大部分は不明のままである。研究グループは、高齢者において、CT画像診断で確認したディスアナプシスがCOPDの発生およびCOPDにおける肺機能低下と関連しているかを調べる検討を行った。JAMA誌2020年6月9日号掲載の報告。

ディスアナプシスと、COPD発症率やCOPD患者の肺機能低下との関連を検証

 研究グループは、2010~18年に米国6ヵ所で行われた「アテローム性動脈硬化症の多民族研究(MESA)肺試験」(被験者数2,531例)と、2010~18年にカナダ9ヵ所で行われた「カナダコホート閉塞性肺疾患」(CanCOLD、被験者数1,272例)の2件のコミュニティーベースのサンプル、および2011~16年に米国12ヵ所で行われたCOPDのケースコントロール試験「COPDの部分母集団と中期アウトカム尺度に関する試験」(SPIROMICS、被験者数2,726例)を基に、後ろ向きコホート試験を行い、CT画像診断で確認したディスアナプシスと、高齢者のCOPD発症率や、COPD患者における肺機能低下との関連を検証した。

 ディスアナプシスは、標準的な解剖学的部位19ヵ所で測定した幾何学的平均気道内腔を、肺容積で割り定量化した(気道/肺比)。

 主要アウトカムはCOPDの発症率で、気管支拡張薬投与後の1秒率(FEV1:FVC)が0.70未満で、呼吸症状を伴う状態と定義した。副次アウトカムは、肺機能の縦断的変化だった。

 全分析結果について、人口統計学的要因や標準的COPDリスク因子(喫煙や受動喫煙、職業性・環境汚染、喘息)で補正を行った。

気道/肺比の格差、FEV1低下幅には関連せず

 MESA肺試験被験者2,531例の平均(SD)年齢は69歳(9)で、女性は1,334例(52.7%)だった。COPD患者は237例(9.4%)で、平均(SD)気道/肺比は0.033(0.004)、平均(SD)FEV1低下幅は-33mL/年(31)だった。COPDを有していなかった被験者2,294例において、追跡期間中央値6.2年の間に新たにCOPDを発症したのは、98例(4.3%)だった。

 気道/肺比が最高四分位群の被験者と比べて、最低四分位群のCOPD発症率は有意に高率だった(1,000人年当たり9.8 vs.1.2、率比[RR]:8.12、95%信頼区間[CI]:3.81~17.27、率差:8.6/1,000人年、95%CI:7.1~9.2、p<0.001)。一方で、FEV1低下幅について有意差はみられなかった(−31 vs.−33mL/年、群間差:2mL/年、95%CI:-2~5、p=0.30)。

 CanCOLD試験被験者1,272例の平均(SD)年齢は67歳(10)、女性は564例(44.3%)だった。追跡期間中央値3.1年の間にCOPDを発症したのは、113/752例(15.0%)、平均(SD)FEV1低下幅は-36mL/年(75)だった。

 気道/肺比が最高四分位群の被験者と比べて、最低四分位群のCOPD発症率は有意に高率だった(1,000人年当たり80.6 vs.24.2、RR:3.33、95%CI:1.89~5.85、率差:56.4/1,000人年、95%CI:38.0~66.8、p<0.001)。一方で、FEV1低下幅について有意差はみられなかった(-34 vs.-36mL/年、群間差:1mL/年、95%CI:-15~16、p=0.97)。

 SPIROMICS被験者のうち、追跡期間中央値2.1年でCOPDを発症したのは1,206例で、平均(SD)年齢は65歳(8)、女性は542例(44.9%)だった。そのうち気道/肺比が最低四分位群の平均(SD)FEV1低下幅は-37mL/年(15)で、MESA肺試験被験者の低下と有意差はなかった(p=0.98)。一方で、最高四分位群の低下幅は、MESA肺試験被験者の低下幅と比べて有意に大きく、低下が急速に起きていたことが判明した(-55mL/年[SD 16]、群間差:-17mL/年、95%CI:-32~-3、p=0.004)。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)