COPD患者の退院後呼吸リハ、早期開始で死亡リスク減/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2020/05/25

 

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)で入院したメディケア受給者では、退院後3ヵ月以内の呼吸リハビリテーションの開始により、1年後の死亡リスクが低減することが、米国・マサチューセッツ大学のPeter K. Lindenauer氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年5月12日号に掲載された。COPD増悪後の呼吸リハビリテーション(運動訓練、自己管理教育)が生存率を改善することはメタ解析で示唆されているが、この解析に含まれた試験は患者数が少なく、異質性が高いという。米国の現行ガイドラインでは、COPD患者に、退院後は呼吸リハビリテーションに参加するよう推奨している。

90日以内と以降の開始を比較する開始コホート研究

 本研究は、2014年に米国の4,446の急性期病院にCOPDで入院した出来高払い方式メディケア受給者の保険請求データを、後ろ向きに解析した開始コホート研究(inception cohort study)(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成による)。最終フォローアップ日は2015年12月31日だった。

 呼吸リハビリテーションを、初回退院後90日以内に開始した患者と、90日以降(91~365日)に開始または呼吸リハビリテーションを行わなかった患者を比較した。また、傾向スコアでマッチさせた患者の比較も行った。

 主要アウトカムは、1年後の全死因死亡とした。探索的解析として、呼吸リハビリテーションの開始時期と死亡率との関連、および終了した呼吸リハビリテーションの回数と死亡率との関連の評価を行った。

1年死亡率:7.3% vs.19.6%

 4,446病院に入院したCOPD患者19万7,376例(平均年齢76.9歳、女性11万5,690例[58.6%])が解析の対象となった。このうち、2,721例(1.5%)が退院後90日以内に呼吸リハビリテーションを開始し、3,161例(1.6%)は91~365日に開始した。

 退院から1年以内に3万8,302例(19.4%)が死亡した。このうち、7.3%が90日以内に呼吸リハビリテーションを開始し、19.6%は90日以降に開始または呼吸リハビリテーションを行わなかった。90日以内開始群は、90日以内非開始群に比べ、1年死亡リスクが有意に低かった(1年死亡率:7.3% vs.19.6%、絶対群間リスク差[ARD]:-6.7%、95%信頼区間[CI]:-7.9~-5.6、ハザード比[HR]:0.63、95%CI:0.57~0.69、p<0.001)。

 90日生存例(1年死亡率:90日以内開始群6.2% vs.90日以内非開始群13.4%、ARD:-5.8%、95%CI:-6.9~-4.6、オッズ比[OR]:0.54、0.46~0.63)に限定した解析でも、生存に関して同様の効果が認められた。

 また、在宅酸素療法の使用例(ARD:-5.7%、95%CI:-7.4~-3.5、OR:0.60、0.49~0.75、p<0.001)と非使用例(-6.8%、-8.0~-5.4、0.43、0.34~0.54、p<0.001)、併存疾患の負担が軽度(-7.6%、-8.6~-6.2、0.27、0.19~0.39、p<0.001)、中等度(-5.0%、-6.7~-2.8、0.57、0.43~0.75、p<0.001)、重度(-3.8%、-6.7~-0.5、0.76、0.59~0.97、p=0.03)の患者のいずれにおいても、90日以内開始群で死亡リスクが低かった。

 傾向スコアでマッチさせた患者(両群2,710例ずつ)でも、90日以内開始群で死亡リスクが低かった(7.3% vs.14.1%、ARD:-6.8%、95%CI:-8.4~-5.2、HR:0.50、95%CI:0.42~0.59、p<0.001)。

 呼吸リハビリテーションの開始時期別の比較では、90日以内非開始群に比べ、退院後30日以内に開始した患者(ARD:-4.6%、95%CI:-5.9~-3.2、HR:0.74、95%CI:0.67~0.82、p<0.001)、31~60日に開始した患者(-10.6%、-12.4~-8.4、0.43、0.34~0.54、p<0.001)および61~90日に開始した患者(-11.1%、-13.2~-8.4、0.40、0.30~0.54、p<0.001)のいずれも死亡リスクが低かった。

 退院から90日までに受けた呼吸リハビリテーションの回数の中央値は9回(IQR:4~14)であった。回数が3回(1週間の推奨回数)増えるごとに、死亡リスクが有意に低下した(HR:0.91、95%CI:0.85~0.98、p=0.01)。

 著者は、「これらの知見は、COPDで入院後の呼吸リハビリテーションに関する現行ガイドラインの推奨を支持するものだが、交絡が残存する可能性があり、さらなる検討を要する」としている。

(医学ライター 菅野 守)