既治療HER2陽性胃がん患者において、トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)は医師が選択した化学療法と比較し、客観的奏効率(ORR)および全生存期間(OS)を有意に改善した。安全性については、骨髄抑制および間質性肺疾患の副作用が顕著であった。国立がん研究センター東病院の設楽 紘平氏らが、日本の48施設および韓国の18施設で実施した無作為化非盲検第II相試験「DESTINY-Gastric01試験」の結果を報告した。トラスツズマブ デルクステカンは、抗HER2抗体と新規トポイソメラーゼI阻害薬を、切断可能なテトラペプチドベースのリンカーを介して結合させた抗体薬物複合体(ADC)である。第I相試験において既治療HER2陽性進行胃がんに対する有効性が示されていた。NEJM誌2020年6月18日号掲載の報告。
トラスツズマブ デルクステカンと、医師が選択した化学療法(イリノテカンまたはパクリタキセル)を比較
研究グループは2017年11月~2019年5月の期間に、トラスツズマブを含む2つ以上の治療を受けていたHER2陽性(IHC 3+またはIHC 2+/ISH+)の進行・転移を有する胃腺がんまたは胃食道接合部腺がん患者188例を対象に試験を行った。被験者をトラスツズマブ デルクステカン群(6.4mg/kg、3週ごと)、または化学療法(医師がイリノテカンまたはパクリタキセルのどちらかを選択)群に2対1の割合で無作為に割り付け、追跡評価した。
主要評価項目は、独立中央委員会評価によるORR、副次評価項目はOS、奏効期間、無増悪生存期間(PFS)、確定した奏効(奏効が4週間以上持続)、安全性であった。
188例中187例が治療を受けた。内訳は、トラスツズマブ デルクステカン群125例、化学療法群62例(イリノテカン群55例、パクリタキセル群7例)。
ORRは51% vs.14%、OSは12.5ヵ月 vs.8.4ヵ月と、いずれもADC群が有意に良好
ORRは、トラスツズマブ デルクステカン群51%、化学療法群14%であった(層別Cochran-Mantel-Haenszel検定のp<0.001)。OS中央値は、トラスツズマブ デルクステカン群12.5ヵ月、化学療法群8.4ヵ月で、トラスツズマブ デルクステカン群で有意に延長した(死亡のハザード比[HR]:0.59、95%信頼区間[CI]:0.39~0.88、両側p=0.01、事前に規定したO'Brien-Fleming法による死亡数に基づいた有意水準p=0.0202を下回った)。
主なGrade3以上の有害事象は、好中球数減少(トラスツズマブ デルクステカン群51%、化学療法群24%)、貧血(38%、23%)、白血球数減少(21%、11%)などであった。間質性肺疾患または肺臓炎(独立中央委員会による判定)の副作用が、トラスツズマブ デルクステカン群で12例に認められた(Grade1/2:9例、Grade3/4:3例)。治験薬に関連した死亡は、トラスツズマブ デルクステカン群でのみ1例(肺炎)報告された。
(医学ライター 吉尾 幸恵)